美術館(展覧会)てくてく日記 第85回(スタッフ・藤)
酒井抱一生誕250年 琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―
第2部<転生する美の世界>
会期:2011年2月11日(金・祝)~3月21日(月・祝)
会場:出光美術館-
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第2部 転生する美の世界は4章構成になっています。
1章 琳派の系譜
2章 薄明の世界
3章 抱一の美
4章 其一の美
1章では鈴木其一の「三十六歌仙図」と酒井抱一の「風神雷神図屏風」があります。「三十六歌仙図」は英国博物館にもあります。構図はほぼいっしょですね。元々の構図はメナード美術館にある尾形光琳の「三十六歌仙図」。この光琳の「三十六歌仙図」は秋田佐竹家伝来ということですから,「佐竹本三十六歌仙絵巻」を頭に描きながら見たほうが良かったかなと見終わったあとに思いました。それと描き表装が素晴らしいので,そこも注目したいです。「風神雷神図屏風」は宗達と光琳のそれとを比較してみてしまった(出光2006,東博2008)今,迫力不足は否めないなあという気がします。
2章では酒井抱一の「紅白梅図屏風」,鈴木其一の「芒野図屏風」に眼を奪われました。しかし,銀地着色は劣化の問題が大きい。もともとの色はどうだったのだろうと思います。それと右隻にいくつかシミのようなものが見られますが,これは折り畳んだときの顔料痕とのこと。ということは折りたたみの向きから考えると裏絵ということになるわけで,表絵が何だったろうと想像がふくらみます。裏絵という形で私淑することを表現する抱一の方法には憧れます。
3章はなんといっても酒井抱一「燕子花図屏風」です。鉄漿蜻蛉のたたずまいが素晴らしい。また蒔絵下絵帖も見逃せない。乙川優三郎『麗しき果実』を読んでなかったのがくやまれますねえ。朝日新聞で連載されていたときに,なんかしっくりこないので途中で挫折したままなのです。もうすでに本になっているのでここは読んでおかないと。
最終章の其一の美では,「桜・楓図屏風」,「蔬菜群虫図」など鈴木其一の代表作が並んでおり,琳派の中で,自分の中で軽んじてきた鈴木其一の評価が揺らぎました。「蔬菜群虫図」はなんか変わった構図だし,「四季花木図屏風」もとてもきれいですが,右隻の牡丹が妙に大きかったりしていて,以前はなんか落ち着きがない作風だと思っていたのです。しかし,今回の印象は抱一よりもぐっと光琳っぽい感じがしました。それもいい意味でモダンにアレンジした印象です。何度も見ていると,印象って変わってきますね。
畠山記念館でも,酒井抱一展が開かれていますし,4月からは根津美術館で,燕子花を描いた光琳の二つの金屏風,「燕子花図屏風」(根津美術館)と「八橋図屏風」(メトロポリタン美術館蔵)が同時に展示されます。今年もまだまだ琳派の勢いは収まりそうもありません。(花影抄 藤)
- 2011/02/19(土) 16:04:22|
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