FC2ブログ

根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「09年8月/楽虫」

「連載:古典根付師を想う 第三回 凉(りょう)」楽虫/作家便り8月

blog_090822_ryo.jpg
[画像出典/LOS ANGELES COUNTY MUSEUM OF ART Collections Onlineより]

凉(りょう)という根付師がいます。

江戸時代ではなく、明治~昭和初期までの人ですが、彼が彫る人物の根付は、本当に
素晴らしいもので憧れです。

彼の根付は、見る物をほのぼのとさせ、その情景に引き込むような魅力があります。
女性も数多く彫っていますが、彼の彫る女性は、誰が見ても美人だ綺麗だという
ものではなく、むしろちょっと愛嬌のあるタイプ、こういう人が多分いたんだろうな
と思わせるような生き生きとした雰囲気に満ちています。

このような根付をたくさん作り出している凉の腕は本当に凄い。
根付の題材は数多くあれど、生き生きとした人物を見せるという事になれば、製作難
易度は信じられないくらい上がります。

根付の歴史の中でも、女性を彫っていて、さらに体にまで表情を付けられている根付
師は実は本当に少ないです。大抵は、棒立ちでお人形さんのようになってしまいます。
かろうじて首は傾げられていても、体はやはり固い感じのものが殆どです。何故そう
なるのかというと、やはり体を動かすということが難しいからです。人物を彫る場合、
表情だけでなく体の骨格まで動かせるというのは、もの凄い効果があるという事が彼
の根付を見ればよくわかります。

しかしこのような味を出せている彼の才能は天性の物か?と思わされるところもあり
ます。彼はどこの門に入って、どういう修行をしたのか私にはわかりませんが、全体
の雰囲気の素晴らしさとは裏腹に、細部を見るとけっこう着物の柄が雑だったり、毛
彫りの線がよれていたりとそのギャップに驚かされます。しかし全体のフォルム、雰
囲気があまりに素晴らしいためにそのような箇所も全く気になりません。

根付というのは細密彫刻ではありますが、例えば毛彫りが細かいとか、細部が整って
いるということより、まず何をおいても全体の雰囲気が一番大切なんだと彼の根付で
教えられます。自戒の念も含めて言えば、とかく製作者は細部に目が行きがちですが、
まず全体のフォルム、雰囲気を出すという事に一番気を配るべきなのでしょう。雰囲
気が良ければちょっとのアラはむしろ味として好ましく思われ、その逆、細部がいく
らよく彫れていても雰囲気がない根付は良い根付に見えません。まあ、もちろん細部
も隙が無く雰囲気も良い根付を目指すべきなのは言うまでもありません。

彼の根付は国内ではあまり見ることがなく、寡作な作家かと思っていましたが、外国
にはたくさんあるとの事です。外国人が見ても彼が彫る人物の豊かさはよくわかるの
でしょう。


  1. 2009/08/22(土) 11:14:49|
  2. 楽虫(東京)