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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「09年3月/伊多呂」

「根付作品『御宿風景』によせて」伊多呂/作家便り3月

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現在制作中の「御宿風景」


伊多呂です。
私が生まれたのは千葉県の太平洋側、外房に位置する大網(おおあみ)という小さな田舎町です。私はその町で幼少の6年間を過ごしました。九十九里浜に近く、まだその頃は地曵網漁が行われていたように記憶しています。まさに昭和の真っ直中といった時代です。
御宿(おんじゅく)は大網からさらに40kmほど南に下った場所に位置し、そのころはまだ海女の素潜り漁が行われていました。海女は紺がすりの作業着に白い晒の帯をしめ、頭に手拭きをあねさんかぶりにし、一眼レンズの磯めがねを付けて潜ります。このスタイルの磯めがねは昭和10年ごろからのものでそれ以前は二つレンズのものが使われていました。カジメ・オオハ・テングサ・ワカメ等の海藻類、そしてサザエ・アワビ・伊勢海老といった高級食材が彼女達の収穫物です。全盛期には男が漁に出て稼ぐよりもはるかに多くの収入を得ていたそうです。そうした海女の姿も高度経済成長のおしよせる波により、昭和30年中ごろから次第に見かけられなくなります。漁師自体が収入のよい職業に移るようになり、昔ながらの漁業一家も徐々に姿を変えて行きました。おそらく私が幼い頃見ていたであろう懐かしい海辺の光景は、既に変わりつつある昭和の原風景だったのでしょう。
  1. 2009/03/22(日) 21:33:53|
  2. 作家