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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り2022年3月/「老根付師 徒然草 令和四年 弥生」 齋藤美洲(埼玉)

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 桜の開花の報もあり、様々な芽吹きを周辺に観る。オミクロンも収束の気配に、二年もの鬱々に別れられると想いきや、馬鹿ジジイが世界大戦を危惧される様な戦争を始めやがった。
 私は、根付師として続けて来られた経験を次の世代に、参考になればと呟いている。今月は成功体験について書こうと思っていたのには、由縁がある。
 明治(1868年)から今年(2022年)までの真ん中の年に敗戦があり、前後77年の歳月が流れていると知った。根付が使用目的を失ってからも、創り続けられて154年ともなる。感慨深い思いがする。

 1945年を中心に、前期、後期と分けると、形は違うが同じ轍を踏んで来た様に思える。
 前期 中央集権国家となり、戊辰、西南、日清、日露、第一次世界大戦を経て列強の一員となる。さらに国益を求め、太平洋戦争に突入し、敗戦。
 後期 焦土から出発し、戦争の無いが故に経済発展し、ジャパン・アズ・No.1。バブル崩壊が前期のミッドウェー海戦が如き起点となって、現在の格差社会と不況の時代に至る。
 司馬遼太郎先生的に表現させていただくと、日本人は上り調子の絶頂期の成功体験に囚われて、その時の方式に固執してしまう精神構造があるのではないか?
 絶頂期にこそ危機の芽が潜んでいて、次世代を予見しなければ退潮する。前期ではレーダー、後期ではPC、AI等が大きな一因だろう。日本にビル・ゲイツは現れるだろうか?
 要するに、成功体験の方式が信奉に変わると失敗の道を歩むことになる。特に年寄りは、懐古と頑固が加わると始末に負えない。プーチン氏も良き一例だろう。私はもっと老人だが…。
 このブログが出る頃には、事態が収束している事を祈るのみ。

 話を本題に戻す。根付師の成功体験。
 年齢に関係なく、根付師と名乗る作家はオリジナルで勝負する。大袈裟な表現だが、根付師はアーティストたるべしで、過去の名品はアート作品なるが故にその存在感を輝かせる。
 昔も今も、根付師は上記の気構えで作品を発表している。特に最近は徒弟制が無い時代故に、個性の表現が目立って面白い。こうして発表を続けているうちに、どの作家も評価の高い作品を発表する時が来る。それが俗にヒット作といえるだろう。
 とにかくヒット作を出した作家は注目され、数年は作品も良い評価がされるだろう。それが作家の成功体験といえる。
 以後その作家が長く続くには?を考える。私の経験からの私見であるが、自信を得た行け行けドンドンの時こそが自分を見つめる好機だ。ヒットの要因は、その時代が求める何かなのか、作家自身の表現、技巧なのか、精神的なもの、美意識なものなのか等々、多様な検証をして実感すべきだろう。
 こうして自分を客観視出来れば、自分の長所、欠点を知り、自然と次の作品に新鮮さを持たせ、マンネリ的作品にならない。
 私から見て、長く続けて来られた作家に接すると、皆、鋭い感性と理想像を持っていて、話も深くなり、時代、年齢差を超える。
 根付師の成功体験は作家がより向上する為の好機で、個々の内面に関わるもの故争いごとにはならない。

 今回の原稿は、プーチンの所業の為に、敗戦の焦土、東北地震津波による破壊が思い出され、ウクライナの惨状を見て心乱れ、支離滅裂な事、深謝。

 本日、桜の開花の陽光の下でお腹を出して、思い切り伸びをして、心置きなくうららかさを楽しめたらとの願望を、未完の拙作で表したく掲載。


未完の拙作1 (表側と裏側)
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未完の拙作2 (表側と裏側)
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  1. 2022/03/31(木) 18:00:00|
  2. 齋藤美洲(埼玉)