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根津の根付屋 & 花 影 抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「12月/安剛」

「小林かいちの絵封筒」藤井安剛/作家便り12月

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絵封筒各種(かいち以外のものも含む)/れんげ堂蔵


早いものでもう師走です。
一年振り返ってみますと、一月しょっぱなに行った、根津の竹久夢二美術館「小林かいち展」は、未だに強烈な印象が残っています。

れんげ堂も私も、今よりもう少し若かった頃、原宿の東郷神社の骨董市に第1・第4の日曜日ともなれば、朝早くから二人で出掛けていました。その頃は、野外の骨董市としては東郷は最大規模でした。すでに若手根付師として活躍していた三昧さんも、道具屋として箪笥などを売っていたそうです。私は、まだ根付の事もよく知らないで、ひたすら古い将棋駒を探していました。誰もが先ず商品(モノ)の方に視線を向けていたので、私にとっては居心地の良い空間だったのかもしれません。れんげ堂は、というと、着物を中心にその他の小間紙の類・・・千代紙やぽち袋、絵封筒などを求めていたようです。その買い集めた絵封筒の中に、十数枚、小林かいちの物が入っていました。

老舗の小間紙屋さんでは、日本橋の「はいばら」、谷中は三崎坂の「いせ辰」などと並んで、京都では三条新京極角(かど)の「さくら井屋」が挙げられます。「さくら井屋」の専属デザイナーとして、大正から昭和にかけて膨大な仕事を残したのが、小林かいちです。

ここ2~3年の間、ブームとも言える取り上げられ方をされている、かいちですが、市場でも一枚の絵封筒に、モノによっては2万~3万以上の値がついた時期もありました。4枚セットの絵葉書袋付き完品ともなれば、とてもじゃないが手の出る金額ではありません。今は多少、値は落ち着いているようですが、その仕事量と作品一つ一つの質の高さは、魅力溢れる「京都アール・デコ」の世界を見事に作り出しています。

高畠華宵に代表されるような色彩の最も華やかな時代に、最も過激な色使いとグラデーションを自在に操った、かいちが、和紙に木版摺りという伝統的なスタイルで残した、その絵封筒は、優に七百種は超えるだろうとも言われています。




  1. 2008/12/11(木) 19:28:08|
  2. 藤井安剛(東京/東村山)