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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り2018年12月/「老根付師 徒然草 師走」 齋藤美洲(埼玉)

 月日は百代の過客にして、行きかう人も又、旅人なり・・・なぞ想いながら、本年も根付師として人生の旅を歩み、平成三十一年も同じ姿でトボトボ・・・。
 昨日、ボーリングに一人で興じていたら、楽しむ事6ゲーム。受付嬢に驚かれた。まだ脚力はあるか?啊啊。

 回帰の想い 「根付彫刻のすすめ」付録 プロ編
 毎年、年賀状は十一月に創り、言葉ではない近況報告にしている。
 この一年、個展の為の豊年踊りシリーズを、制約のある鹿角で制作して過ごし、多少厭きを感じていた故、賀状用作品は、私の原点に還り、古典(本来)へのオマージュを主題とした。
 創り始めると、時間を超えて、若き日の自分が仕事場にいた。古典を畏敬しながら、オリジナリティを保つのに苦慮しつつ・・・。
 図柄は、良く見かけるものだが、これに私が表現できるかと、デッサンを重ね、完成図を脳裏に叩き込む。これが、良くなるか否かの分かれ目。
 次に材料をデッサンに合わせた塊(オブジェ)を造る。この時は、脳裏の完成図が六面体として全てのアングルを認識していなければ、実際の作品は違うものになる。
 出来た塊は単なる物体であるが、そこに完成形を感性移入させると動きが見えてくる。完成形に合わせ、鼻先から尾先までに線を引けば、S字が浮かぶ。それを背骨に頭、胴、尻を想像すれば、自ずと垂直方向にしか見えない塊に動きが出る。古典名品には左右対称がないのは、この原理だ。
 こうして、各部位を塊に線で書けば、後は彫り出せば荒彫りなり、仕上げ仕事につながる。
 私は今回、各部位の特長を強調することより全体のフォルムの方に心掛けた。根付としての塊に力を入れた。腹の太い丸みを見せるために後右肢を伸ばして、左前肢の下まで持ってきた。これは同時に腰を横にすることにより、フォルム全体に動きを持たせるためでもある。
 古典根付に思いを馳せ、実に楽しい時間であったが、仕上がってみると、雅俊先生の言葉が心に刺さる。“納得いくまでやる事ですョ” 何回も書くが、仕上がりとした作が、その作家の実力である。古典の評論、評価が出来ても、古典の域に達するのは至難と思い知らされた。ただ、この仕事は、楽しくやりがいのある大きなテーマである事にも気が付いた。生まれ育った古里の町を散策する様に・・・。

 古典資料を漁って・・・
 とにかく面白く、時の経るのを忘れる。
 各作家の発想が個性的であり、突き詰めた作品を観ると、その人の性格、人生観さえ想像できる。
 江戸根付は、装剣奇賞に見られる初期から幕末まで、技術的進歩は目覚ましいが、一芸を成した根付は、テクニックを超えた、何かに心を魅了される。
 時代、時代によって作風は変わるが、私がめでる作品には全て“品格”を感じる。それが何処より来るのかは、現時点では説明できないが、厳然として有るのは確か。

 幼少より根付に惚れ込み、彫り続けてきた爺が、己の至らなさを曝す如きに書いてきたが、パラドックスに、次の如く自覚。
 己の下手を誇れ!! 何故ならば、上手になる道は眼前に有るからだ。
 上手になったら、上手を維持するために受身になってしまい、その先つまらないかもネ・・・。

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  1. 2018/12/30(日) 22:34:10|
  2. 齋藤美洲(埼玉)