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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り 「2016年8月/森栄二(葉山)」

犬が死んでしまいました。
夏の朝でした。
レントゲンの白黒の透視写真では、健康ならば真っ黒に写るはずの肺が、真っ白に写っていて炎症を起こしているのは明らかでした。
何か具合が変だなと気がついてから1週間足らずで死んでしまいました。あんなに好きだった散歩を嫌がり、最後には荒い息が昼夜続くようになり入院することになりました。

酸素室に入り、点滴もして、入院すれば何とかなると思ってたのに、次の朝、突然病院から息を引き取りそうだという連絡を受け、急ぎましたが間に合うことができませんでした。

初めて飼った犬です。
まだ9歳だったのに。近くにに20歳まで生きたライバル犬が最近まで生きていたので、まだまだと思っていました。

僕はむしろ次のトリミングのことなど考えていて、この前連れて行ったお店は仕上がった時の匂いがきつくて嫌だな、やっぱりいつも行っている動物病院のペットケアセンターに戻そうかとか、足の毛が割と長めにされてしまったので今度はよくお話しをしてもっと短くさわやかにしてもらおう、とか。



ほんとによく噛む犬だった。内出血で爪が黒くなったり、ポタポタと血が垂れるほどの深い傷を負わされたことも何度もありました。
最近では鼻の頭を噛まれてその痕がまだ赤く残っています。(僕が癒されようと無理やり顔を押し付けたりしたからですが・・・)
小型犬のくせに。
問題の多い犬だったなー。いびきも遊びに来た人が聞くとビックリするほどうるさいし。

目薬、耳の掃除、シャンプー、お世話はなにをやるにも挑むような心構えを必要としました。



死んでから半日ほど立って亡骸を抱きしめると冷たいです。

いつものベッドに寝かせ、花を飾り、大好きだったサツマイモをそなえたりしながらも妻は何度も抱き上げ
悲しみと闘っているようでした。

笛も息をしない犬を怖がらず抱きしめていました。僕も抱きしめました。交互に家族で抱きしめました。
亡骸に鼻をつけ、犬の匂いを胸をいっぱい吸い込むと、生きてる時より多少弱く感じましたがまさに
いつもの彼の匂いです。涙がぽろぽろ出て、もっと強く抱きしめると嗚咽も出て止まらなくなりました。
顔を上げると妻と一緒に笛も口をゆがめて涙を流して泣います。

思うと僕は誰かが死んでこんな状態になるのは初めてではないか。
父も祖父母も僕が1歳になる頃には皆もう死んでいて、近しい家族のお葬式シ-ズンを体験できなかった
自分にとって、”家族の死”とは、補うことが決して出来ない、どこか心の穴のようなものの一つではなかったか。
この突然の悲しみは、心にぽっかりと穴を開けつつも別の穴を僅かに修復しているのかもしれない。



その日、ゆらゆらと何も見えなくなりそうな暑い午後、小さな移動式の火葬車が家にやって来て、犬は焼かれました。

小さな亡骸に花を添え、最後の別れをしてから焼き終わるまでの1時間、

我々は居間の床にごろんと横たわり、いつの間にか眠りこんでいたのです。


2016.8月  森栄二
  1. 2016/08/29(月) 05:02:00|
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