根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「16年8月/かぶ(東京)」

暑い日が続きますが、どのようにお過ごしでしょうか?
今が盛りと蝉も鳴いていますね。

先日、夜も更けてから、窓のすぐそこで「かなかなかな」と鳴く声が聞こえました。
「かなかなかな…」と鳴くこの蝉を、私は「かなかな」とその鳴き声のままに呼んでいましたが
この蝉は「ひぐらし」の事だったんですね。
「ひぐらし」の鳴き声を聞くなんて、久しぶりの事でした。

子どもの頃、夏休みになると母親の実家に遊びに行っていました。
母親の実家は農家で、母屋は茅葺き屋根に広い土間、高い天井に真っ黒になった太い梁。
部屋の周りをぐるりと囲った濡れ縁に寝そべって、庭に咲いている夏の花々を描きながら
井戸水で冷やしたスイカを食べ、暗くなれば花火という
今にして思えば、絵に描いたような夏の曰を過ごしていました。

ちょうどお盆の時期でしたので、回り灯籠の青い灯りが部屋をぼんやりと照らしていて
夜更けになると虫の音以外は聞こえず、回り灯籠につられて動く影に、怖い思いを抱いていたものです。
裏庭にはスイカ畑があり、幽霊が出るよとからかわれ、昼間でもその畑を見ないようにと
裏庭が見える窓をよけていました。

お盆の時期でしたから、お墓参りに行くのですが
母親の実家の方では、日が落ちて暗くなってから行くのが習わしでした。
その曰になると白い浴衣を着て、蝋燭の火がちらちらと瞬く赤色の提灯を手に持って
土葬のお墓に行くのでした。
回りのお墓からもぽつぽつと赤い提灯の火が見えて、ほんとうなら怖いはずが
いつも何故か、わくわくとしてお墓参りをしていました。

その後何年かして、茅葺き屋根の母屋は現代的な家に建て替えられ
母親の実家に泊まりに行く事もなくなってしまいましたが
でも今でも「日本の夏の湿った空気」の原風景として、あの頃の私があるのだなぁと
かなかなの声を聞いて、まざまざと思い出したのでした。

まだしばらくは暑い曰が続くようですね。
皆様、お体にお気をつけて、お過ごしください。

先月、不忍池で撮影しました。

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  1. 2016/08/10(水) 17:31:48|
  2. かぶ(東京)