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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「14年5月/泉水(東京) 」

汐留ミュージアムで開催中の「フランス印象派の陶磁器」展に行ってまいりました。

1866~1886のjaponismの影響があった、印象派の陶器。
はずかしながら、陶磁器にそのような分野があることを知りませんでした。

まず注目するのは会場の入り口に展示してあったF.ブラックモンによる「ルソー シリーズ」と
呼ばれる1867年パリ万博で発表されたファイアンス(注1)のお皿でしたが、白い皿に北斎風の
絵が散らばっている、という私が見ても不思議な皿。これはヨーロッパ的には相当びっくりな
デザインだった(それまでは皿の絵には必ず中心があり、同心円状に模様がデザインされて
いるものしかなかった)ようですが、主に北斎漫画から写したという模様はそれはそれは種を
超え色々なものが脈絡なく自由に配置されています。

私のお気に入りは「エイ+四十雀+花」のお皿です。エイも四十雀も何故かお腹側が描かれており
フォルムが似ている為か、一枚のさらに配置されているのですが、同じ空間をエイと四十雀が悠々と
羽ばたいている感じが実に感動的です。この、日本ぽい、というだけで、季節感やら何やらを無視
した模様の選択には理由がある ようです。ブラックモンが北斎漫画のあちこちからピックアップし、
描きとった図案を転写シートに写したものを職人たちが一つ一つ切り取り、職人たちの好きな様に
並べられた結果なようです。そういった、制作に自由を与えられた工房だったようで、職人たちも
楽しく図柄の組み合わせを考えていたのではないかと想像すると、ちょっぴり楽しくなりました。

DSC_0100.jpg

もう一つ、私の気になった展示に「バルボティーヌ」という作品群があります。
この字面を見たとき、「あれ、何のことだっけ・・・」と思って、作品を見てもピンと来ず、ネットで
検索して気づきました。私の知っているバルボティーヌは、フランスの 骨董市などで見かける
フランス製マジョリカ陶器のことでした。カラフルな植物や動物の形をした皿や三次元的な皿、
かなりデコラティヴなものです。

しかし、この展示で見たバルボティーヌは随分と違っていたので気づきませんでした。
どうやら「バルボティーヌ」には狭義的なものと広義的なものがあるようで 、狭義的には私の知って
いた皿などのことのようですが、広義的には「化粧土」(注2)の事のようで英語で言う“slip”でした。

展示のものも後半は形状がデコラティヴになっており、マジョリカに近い感じがありました。
興味深いのは化粧土の使い方です。化粧土を施された陶器の歴史は古く、紀元前からあった
ようですが、近代に入って有名なのはバーナードリーチを代表する、イギリスのスリップウェアだと
思います。スリップウェアでは、化粧土(スリップ)をスポイト等に入れ、線で模様を描く、或いは全体に
化粧土を掛け、表面を引っ掻いて素地の色を出しながら模様にするものですが、今回のバルボティーヌの
様に化粧土を油絵の具の様に塗り重ね、絵を描いていくと言う使い方は初めて見ましたし、驚きました。

時代的に印象派の絵画を器の上に再現したい、と思う気持ちは理解できるかも、、、と思いました。
光沢の強い透明な釉薬も重ねられた化粧土に深みを加え、陶器らしからぬ透明感を生み出しているように
思いました。 不思議なやきものたちに出会った展覧会でしたが、北斎漫画を見直し、バルボティーヌ、
真似してみたくなってきました!

泉水


注1 ファイアンス: 錫釉(白色の不透明な釉薬)が掛けられた、絵付けに適したやきもの
注2 化粧土:水と粘土、発色顔料などを適度な濃度に混ぜた泥漿

※泉水さんは、7月に個展予定です。
  1. 2014/05/23(金) 20:00:09|
  2. 泉水/北澤いずみ(東京)