汐留ミュージアムで開催中の「フランス印象派の陶磁器」展に行ってまいりました。
1866~1886のjaponismの影響があった、印象派の陶器。
はずかしながら、陶磁器にそのような分野があることを知りませんでした。
まず注目するのは会場の入り口に展示してあったF.ブラックモンによる「ルソー シリーズ」と
呼ばれる1867年パリ万博で発表されたファイアンス(注1)のお皿でしたが、白い皿に北斎風の
絵が散らばっている、という私が見ても不思議な皿。これはヨーロッパ的には相当びっくりな
デザインだった(それまでは皿の絵には必ず中心があり、同心円状に模様がデザインされて
いるものしかなかった)ようですが、主に北斎漫画から写したという模様はそれはそれは種を
超え色々なものが脈絡なく自由に配置されています。
私のお気に入りは「エイ+四十雀+花」のお皿です。エイも四十雀も何故かお腹側が描かれており
フォルムが似ている為か、一枚のさらに配置されているのですが、同じ空間をエイと四十雀が悠々と
羽ばたいている感じが実に感動的です。この、日本ぽい、というだけで、季節感やら何やらを無視
した模様の選択には理由がある ようです。ブラックモンが北斎漫画のあちこちからピックアップし、
描きとった図案を転写シートに写したものを職人たちが一つ一つ切り取り、職人たちの好きな様に
並べられた結果なようです。そういった、制作に自由を与えられた工房だったようで、職人たちも
楽しく図柄の組み合わせを考えていたのではないかと想像すると、ちょっぴり楽しくなりました。

もう一つ、私の気になった展示に「バルボティーヌ」という作品群があります。
この字面を見たとき、「あれ、何のことだっけ・・・」と思って、作品を見てもピンと来ず、ネットで
検索して気づきました。私の知っているバルボティーヌは、フランスの 骨董市などで見かける
フランス製マジョリカ陶器のことでした。カラフルな植物や動物の形をした皿や三次元的な皿、
かなりデコラティヴなものです。
しかし、この展示で見たバルボティーヌは随分と違っていたので気づきませんでした。
どうやら「バルボティーヌ」には狭義的なものと広義的なものがあるようで 、狭義的には私の知って
いた皿などのことのようですが、広義的には「化粧土」(注2)の事のようで英語で言う“slip”でした。
展示のものも後半は形状がデコラティヴになっており、マジョリカに近い感じがありました。
興味深いのは化粧土の使い方です。化粧土を施された陶器の歴史は古く、紀元前からあった
ようですが、近代に入って有名なのはバーナードリーチを代表する、イギリスのスリップウェアだと
思います。スリップウェアでは、化粧土(スリップ)をスポイト等に入れ、線で模様を描く、或いは全体に
化粧土を掛け、表面を引っ掻いて素地の色を出しながら模様にするものですが、今回のバルボティーヌの
様に化粧土を油絵の具の様に塗り重ね、絵を描いていくと言う使い方は初めて見ましたし、驚きました。
時代的に印象派の絵画を器の上に再現したい、と思う気持ちは理解できるかも、、、と思いました。
光沢の強い透明な釉薬も重ねられた化粧土に深みを加え、陶器らしからぬ透明感を生み出しているように
思いました。 不思議なやきものたちに出会った展覧会でしたが、北斎漫画を見直し、バルボティーヌ、
真似してみたくなってきました!
泉水
注1 ファイアンス: 錫釉(白色の不透明な釉薬)が掛けられた、絵付けに適したやきもの
注2 化粧土:水と粘土、発色顔料などを適度な濃度に混ぜた泥漿
※泉水さんは、7月に
個展予定です。
- 2014/05/23(金) 20:00:09|
- 泉水/北澤いずみ(東京)
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