根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

本日より齋藤美洲展始まりました。

この度、Gallery花影抄では齋藤美洲展を23日(日)まで開催いたします。

代々象牙彫刻の家に生まれた齋藤美洲。象牙を扱うことに制約が強まってくる時代の流れの中で、
誰よりも果敢に多くの素材に挑戦してきました。そしてこの度、セイウチ牙の化石を素材とする
根付に取り組みました。

25年ほど前海外の根付作家が試みていた、セイウチ牙の化石をプレゼントされたのが、
素材との出会いだったそうです。セイウチ牙自体は、古根付でも時折見ることができますが、
「化石」となると極めて珍しい素材です。長い年月土壌に埋まっていたことで、茶褐色に
変化した深い色合い。石化したガラス質の煌めき。千差万別の素材の個体差による偶然性と
オリジナリティは、たちまち作家を魅了しました。

とはいえ、北方の国からの入手が困難な状況で、長年安定した取り組みは出来ずにいました。
インターネット環境の充実と、言語の壁なく海外とやり取りできる知人の助力によって、
一定量の材料を 入手することができるようになり、ようやく一年の月日をかけて向き合った成果が、
今回の作品群です。

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「奥山に…」


根付の黎明たる江戸以来、彫師たちによって様々な素材が試みられてきましたが、とりわけ近年になって
新たな素材が続々と増えたのは、1989年 のワシントン条約による象牙の輸出入禁止措置による影響が  
大きいといえます。当時は世界中の根付愛好家はもちろん、象牙を最重要な素材としてきた根付師たちも 
危機に瀕したのですが、そこに制約を楽しみに変えてしまう根付の本領が発揮されたのです。マンモス牙、   
タグアナッツ、マホガニー、河馬の歯、琥珀、そしてセイウチ牙の化石。根付はかつて持ち得なかった    
新たな素材を獲得することになったのです。
 
根付彫刻には、彫刻技術、デザイン性、そして素材感の三つの見どころがあります。また、デザイン性は
元々の素材の形の制約を含んでいるとも言えます。この度の展覧会では、まさに上記の三要素を凝縮した
世界が遺憾なく展開されています。石化した牙の硬度に負けない彫刻技術、そして出土した化石の不規則な
形や色模様からデザインする柔軟性、さらに特別な素材感を活かし美しく仕上げる力、どれをとっても
難易度の高い仕事であることは間違いありません。

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「家ヲ守ル」

しかし作家は、その困難な仕事の中にこそ、自身の能力を最大限に発揮できる、楽しい遊びが潜んでいることを
見出しました。長年様々な素材を相手に格闘してきた、作家ならではの経験と技術によって裏付けられた根付展
となっています。根津までどうぞ足をお運び頂きますようご案内申し上げます。


齋藤美洲 根付彫刻展
〜この難解で蠱惑的な化石・海象牙〜

2014/3/15(土)~3月23日(日)
3月20日(木)休廊 13:00~19:00
  1. 2014/03/15(土) 14:37:05|
  2. 齋藤美洲(埼玉)