根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「14年3月/齋藤美洲(埼玉) 」

人生、戸の隙間を白馬が駆け抜ける如しと聞くが、人の最終段階における過去の話である。
季節の移ろいは循環するから再生をも意味するが、これまた、早く感じるものだ。
遠くに見えた、冬の白馬が目前を走り過ぎたと思う感慨の間も無く、遠くに春の駿馬の足音。
早や三月、弥生。早朝散策の折に、梅香と共に、春の息吹の土の匂いを楽しむ。

根付に付いて語り合うのに、もっと幅広い観点から角度を変えて見よう。とは以前書いた。

その一例として塚本博先生のブログを見て欲しい。

※一個人blog イタリア・アートの迷宮を旅する
 http://www.ikkojin.net/blog/blog50/19.html

内容は、イタリア、ルネッサンスのトンドと呼ばれる円形画の解説をし、リッピとラファエロ
の作品を紹介し、次にミケランジェロの円形彫刻を上げて、いかに円形という制約の中に自由さ
自然さを表現しているかを、興味深く解説している。

制約の中の自由に付いての作品解説は、遥か遠く、日本の根付に及ぶ。一匹三猿の根付を例に
している。拙作であるが、これは本歌取り故に、古典根付の一代表例として見て欲しい。
正直の丸鼠、光廣の甲申猿人形と基本形は同じである。根付とはの問い掛けに、角度を変えた
また、今までにない新しい根付解説だ。
根付は使えなければ根付ではない。その為には、使用可能な抽象形を基盤にして、具象を
彫り込む事が、どんな細い彫りでも、根付たらしめると私は思う。

去年の今頃、忙しく仕事場に居た。去年開催した個展での作品は、手持ちものが多く、その為ではない。
根付彫刻歴五十年という個展が終わった後の虚脱感で、創作意欲の退化を恐れたからである。

そのため、一年分の荒彫りを昨年春までに作り、その後に備えた。
安心して個展に臨めたが、何故か心の隙間に風が吹いた。私の長年の根付彫刻の「Identity」は
「Make something new」 である事に気付いたからだ。次に作るべき、アイディアが欲しかった。

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素材:セイウチ牙化石


そんな時、再会したのが海象化石である。創作意欲が湧き上がり丸一年、「化石さん」と遊ぶ事になった。
根付の素材としては、面白いもので、作りたい人には挑戦してもらいたい。

参考までに…この素材はアラスカの氷土の中で万年単位で、地中の成分と皮目の部分が
経年変化して、独特の色彩が生まれた。

以前に私も数個根付にし、後を望んだが、25年も待たなければ成らなかった。
この素材は化石化している故、非常に硬く、リューターのバーが切れなくなる時間が早いこと。
小刀も同様で、次に象牙に使うと、ツルツルとして切れず、研きには、時間の掛かる事。
研き作業も象牙の倍は要する。そんな訳で私、只今、親指が腱鞘炎中。

どなたか良い温泉でも教えて欲しい。

内部の泡状の部位は、光の反射が強く深く彫らねば立体感が出せない。故に象牙のティディールを
見せる彫りをしても、効果を発揮出来ない。

何よりも重要なのは意匠である。根付の大きさにカットした時、その形の中に、どんな写実を
根付師が描けるのか勝負になる。故に今回の展覧会にしても、私はそれが出来たのかは不安である。

3月15日より23日までGallery花影抄で展示しています故、ご意見くだされば幸せです。

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齋藤美洲 根付彫刻展
〜この難解で蠱惑的な化石・海象牙〜
2014/3/15(土)~3月23日(日)
3月20日(木)休廊 13:00~19:00


  1. 2014/03/05(水) 19:07:12|
  2. 齋藤美洲(埼玉)