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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

船越桂 夏の邸宅

 「美術館てくてく日記」第5回は、先月まで東京都庭園美術館で開催され、非常に好評を博した「船越桂 夏の邸宅」です。船越の彫刻だけではなく、ドローイングと版画にも焦点があてられ、彫刻以外の分野においても船越作品の素晴らしさを感じることができた展覧会でした。しかし、何といっても今回の目玉はドローイングでも版画でもなく、船越彫刻とアール・デコ装飾に彩られた庭園美術館の作品の出会いにあったと思います。今回の展覧会タイトルである、夏の邸宅、そしてパンフレットの表紙にもアール・デコ空間と彫刻と書かれてあることからも、空間と彫刻との調和に力を注いでこの展覧会を構成してきたのかがわかります。特に「夏のシャワー」や「森へ行く日」などは、あまりにも建築と調和がとれていて、この建物のためにつくった彫刻ではなかろうかと思ったほどです。そして、この感覚は、私に次のような疑問を浮かばせたのでした。すなわち、空間と彫刻はどのような関係をもっているものなのか、また彫刻をみるという行為はその空間との関係まで含むのか否かと。
 彫刻は剣道やフェンシングのように、彫刻と観る者が1対1で向き合うことが重要であると考えていました。しかし、「空間と彫刻の関係もふまえて彫刻をとらえる」ことを観る者にうながすという仕掛けがなされると、これは観る者に混乱を招くように思います。実際、いくつかの部屋には鏡があり、そのような場所においては、彫刻と私、鏡に写っている彫刻と私、それらをとりまく空間と彫刻と私と、様々な角度から順を追って船越の世界観に迫っていくことを要求されます。これはなかなか一筋縄ではいかない鑑賞行為です。
 主役の座にはなれなかったドローイングと版画も非常に見応えがあり、船越作品の素晴らしさを充分堪能した展覧会ではありました。しかし、それ以上に彫刻を見る上で、空間との関係をどのように考えないといけないのか、私自身に課題を投げかけた重要な展覧会となりました。(花影抄・藤)

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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

  1. 2008/10/19(日) 12:18:50|
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