FC2ブログ

根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り「12年1月/森栄二(葉山)」

今年の5月にGalery花影抄で個展を控えている森栄二さんより作家便りが届きました。
葉山でアトリエを構え制作されている森さんの様子がうかがえる、そして制作中のぼけの実の
写真も届けてくださいました。


---------------------------------------------------------------------------------

今、我が家は厳冬期です。一年を通しての一番の山場をむかえています。

私が住んでいるこの家では、太陽の光は遅い朝をむかえたあとも山の上の方にある木の枝をきらきらと
輝かせるだけで、やっと昼ごろ平屋の屋根瓦をわずかにかすめてあっさりと通り過ぎてしまいます。

この場所を覆っている冷めてしっとりと固まった(断面図的には三角形の形をした)空気がその薄い幕で
太陽光をほんの少し屈折させ、今ある状態をかたくなに維持しようとしているようです。

この家のお隣りさんは小さな山です。家は住宅地の南の端にあって、北と道を隔てた東側には民家が
建っていますが、西側は梅や柚などが植えられた微妙に果樹園ともいえないやや開けた土地になって
いてそして南側にある庭の向こうからは、ここはもう家は建てられませんよ!といった具合に地面が盛り
上がり始めているのです。この山は東西に細長くのびていて地図には日影山と記されています。
(我が家の住所も厳密には字日影と番地の前に付くようです。)

庭から見上げると山は南の空を大きくUの字に削りとり、輪郭は森の木々でギザギザとしています。
夏にはたっぷりとある日差しは秋のまだ早いうちから徐々に隠されていき、重なりあった木々のすき間を
なんとかすり抜けて来るほんのひとにぎりのかけらでさえ2時間、1時間と少なくなって、12月から1月の
2ヶ月間はそれさえももう無くなってしまうのです。

これが我が家の厳冬期です。全く太陽の姿を見ることができない季節なのです。

しかし、この期間は寒さということを考えなければ(それが一番の問題ではありますが)時間が止まった
ような静けさにつつまれた不思議に穏やかな日々となります。室内では毎日曇りのような柔らかで少しぼ
んやりとした明るさが朝から午後3時ぐらいまで一定して続き(そのあとは徐々に暮れていきます)、春夏秋
と山から聞こえていた華やかでたくさんの(時には恐ろしいほどの)鳥や虫、リスなどの鳴き声も、ヒヨドリや
カラスといった地味なものとなって、他には宅配便などのトラックがバックで入ってくる警告音や周囲の住宅
地から漏れてくるわずかな生活の音が聞こえるぐらいになります。 

この状況はものを作るということに関して言えばそう悪くないと言えるのかもしれません。
(しもやけになることさえ我慢できれば…)

そんな家にも2月ぐらいから少しずつ日差しが戻って来ます。秋そうやって減じていったように春はほんの
わずかな木漏れ日から始まります。それはまだらにゆらゆらと揺れながらやってきます。とてもうれしい始
まりです。

本当にうっすらとしたものですが、とても分かりやすい季節のしるしといえるものです。

morieij_1201.jpg

写真の作品は庭になっていたボケの実を作ったもので、形はほぼ出来上がっていますがもう少しほったら
かして様子を伺っているところです。今は次のものを作り始めています。散歩の時に拾ってきた花梨です。

2012.1月 森栄二



  1. 2012/01/27(金) 19:11:37|
  2. 森栄二(葉山)