松之内六日、雪。 想起する。
ふる雪や 明治は遠く なりにけり
昭和六年、中村草田男の句で、当時の日本人の心の共感を得、多くの人が明治を懐かしんだ。
時が移り、ラジオ、テレビ等に良く出るフレーズに、「昭和(な感じ)ダネ」がある。これは敗戦以降の昭和を指すと思われるが、言い得て妙と思われる。
前述の句の出来た時と現在は、それぞれ明治、昭和が終わった時からの歳月がおおかた同じである事を考えると頷ける。雪を見て懐かしむは、昭和の御世か、三丁目の夕日か。
面白い事に、明治、昭和を懐かしむ心情には、歴史、文化史的に共通するものがあると考えられる。
明治 封建国から中央集権国家と変わり、殖産興業、富国強兵を国是として、日清日露の戦役を経て、西欧列強に伍す 。大正時代まで順調だった経済も、昭和の世界恐慌から、軍靴と共に敗戦に至る。
昭和 敗戦、ゼロからの出発。(私の記憶もこの時から有る。)二十年を経て、高度成長期に入り、世界二位の経済大国。バブル崩壊から三十年、賃金据え置きのまま今日に至る。ただ、全土が焼け野原にならなかったのが幸いか・・・。
昭和を懐かしむのも、明治へのそれも、上下に差なく、国民の心に良くなるべしと、苦闘した時期だからだろう。
私は樋口一葉の情緒と風情を懐かしむ。根付は江戸のもの・・・。
夜半、街灯に映える雪、あまたの思い出を誘いながら、ひたすらに降る、ふる・・・。
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初心。長く続けられた理由の一つ。
私の兄は、象牙商に十年勤め、独立。商人になると意外に時間が取れ、根付も作り始めた。私同様、仕事の手順は知っていた故、それなりの作で、売れもした。自分の能力で出来る父の図を出していたが、一巡すると売れなくなり、新作の発想が無くなり、断念。
「兄さんと私は、間違いなくDNAは同じ、それなのにねェ。」と笑った。
時を経て、その違いは「初心の志」であると思い至った。
何事にもよらず、事を始める時、人には目的があるだろう。面白そうだから、楽しそうだから、から始まり、知識を得る程に、あの様になりたい、極めてみたい、となる。また、良き収入を得るため、職業としたい等々、多方面からの望みがあるだろう。各人の初心の志が、その後長く続けられるか否かに分かれると思われる。
兄の初心は収入であったが、私の志は根付師になりたいの一事であった。子供の時より古典に感動し、上田令吉も熟読し、美大への活動もしていた故、あとは自分に才が有りや無しやと覚悟し、貧乏やむなしと思っていた。
それより六十年、師と仰ぐ雅俊先生のたった一つの教え、「納得するまでやる事ですよ。」の納得を未だ求めている。
徒弟制のあった、遠くなった昭和まではともかく、以後の根付師を志す多くの人と作品を見てきたが、初心の違いによっての浮き沈みの差がある様に思える。
昨年暮れに、加賀美光訓氏の根付を観る機会を得た。主題は昭和高度成長期の一風景。氏の全作品を知らない故にこの作品のみの評価であるが、楽しませてもらった。根付を通して氏の追求心が見て取れ、制作中の氏が苦ではなく楽しんでいると私には感じられた。この様な根付は、観る人の感情移入をより豊かにし、長く手に取られる。細密技巧を見るのとは違う。
聞けば氏は設計図を立体化する仕事をしていたという。
造形力は身についており、加えて技巧的表現に面白味を持っているのだろう。根付彫刻を始めたのは52歳の時で、現在還暦を越えて意気軒昂。向後に期待大。
上記の結論として、長く仕事を続ければ上手になるというのではなく、志した時の初心が重要な土台になる。
私の思う現在のトップクラスの根付師には、30歳過ぎてからの他業からの転職者が何人かいることを考えるに、「根付とは?」の命題を思考する事が技術作業よりも先行するものと思われる。
光の春 如月近し
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- 2022/01/31(月) 09:00:00|
- 齋藤美洲(埼玉)
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2022年の森謙次さんの個展「珊瑚の国の人」は、おかげさまで会期を無事終了いたしました。
第6波オミクロンの混乱の中ではございましたが、根付のお客様はもちろん、新しい和小物のお客様にも恵まれ、
森さんもスタッフも感謝の気持ちを共にしつつ最終日を終えました。
御来場の方々、ネットのお客様方、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
今回、計画では森謙次さんが出版準備を進めている「珊瑚の本」のお披露目の展示があるはずでした。
スケジュールがちょっと遅れてしまっていて、もうじき高知では発表と展示があるはず!?と思います。
出版されましたら、私どものところでもご紹介をさせていただきたいと楽しみにしております。
森さんが出版する珊瑚の本といっしょに並べる!ということで、森謙次アンティーク珊瑚帯留の展示もしておりました。
過去の職人さんたちの手による技巧的な帯留の展示と森謙次さんの可愛い作品の対比が、今回の展示の妙となっていたと思います。
会期中は毎日、見比べて、お客様方とお話しをして、巧みな古い職人の帯留はたしかに素晴らしく在るけれど、
そこに対して、ポップで可愛らしい森謙次さんの珊瑚帯留は今までになく、他にはない個性と魅力があり、
意義深いのだなあと確信するに至りました。
そして、スタッフが着物で身につけてみた時の、森さんの帯留の可愛らしさ!サイズや雰囲気がとても可愛らしく楽しげに見えました。
今後も、森謙次さんの和小物を是非、お楽しみになさってくださいませ!
作家共々、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
花影抄/根津の根付屋 橋本達士
- 2022/01/30(日) 20:01:56|
- 森謙次(高知)
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発売中の雑誌「アートコレクターズ」2022/2月号は、恒例の完売作家特集。
森謙次さんの昨年の個展の情報も掲載されています!
「桃源郷」と題した個展で、アフターセールスもふくめて、最終的にすべての出品作品を販売することができました。
珊瑚の素材に絞った内容で、珊瑚職人の家に生まれ育った森謙次さんにとって大きな意味のある展示内容でしたので、
作家共々、本当に嬉しく心より感謝を申し上げます。
あらためて、御世話になりました皆様に有難うございました。


「アートコレクターズ」webページ
https://www.tomosha.com/smp/collectors/
- 2022/01/29(土) 21:20:31|
- 森謙次(高知)
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森謙次展 珊瑚の国の人2022年1月22日[土]~30日[日] ※24日[月]休廊
13:00〜19:00 (最終日〜18:00まで)
Gallery花影抄
生まれ育った高知と珊瑚を愛する森謙次さんの展覧会です。
新作の根付と和こもの(帯留や提げ)の展示販売とともに、
森さんがコレクションした珊瑚の帯留も参考展示をいたします。
[ 新作根付作品のご紹介] 1 根付 「大鯛」
珊瑚 象嵌:猪牙、水牛角、白蝶貝、ターコイズ




2 根付「お歳暮」
珊瑚 象嵌:ヘラ鹿角、水牛角、猪牙、黄楊







3 根付「北極鯨」
海松 象嵌:猪牙、水牛角、白蝶貝





※根付作品へのお問い合わせは、Gallery花影抄/根津の根付屋 までお願いします。
電話・FAX 03(3827)1323
メール netsukeya@hanakagesho.com
【新作 帯留作品のご紹介】
今回の展示では、帯留などの和こもの新作も発表しています。
一部を「和こもの花影抄」ページで公開しておりまして、25日(火)以降、追加更新をしてまいります。
何卒宜しくお願い申し上げます。
【森謙次・珊瑚帯留コレクション】
【作家の言葉 森 謙次】
僕が、家業だった珊瑚職人を継いで間もないころ。
僕の父や、僕が習いに行った先輩珊瑚職人の方は、自分の作品をあまり手元に置かない人たちでしたから、僕には「実物を見ながら勉強したい」という思いが強くありました。
珊瑚職人を継ぐ前に奈良一刀彫で木彫を習っていたときには、奈良街(奈良の古い街)や東京国立博物館に行けば参考となる木彫作品がいくらでも見られたのですが、珊瑚は宝石です、作ったらすぐ売りに出してしまうのです。
そのため職人の僕がなかなか珊瑚作品を見る機会がないというのは、ストレスでした。
その反動と、もともと僕に収集癖があるのが相まって、珊瑚の帯留を集めるようになりました。
なぜ帯留なのか? やはり珊瑚職人になったころ、京都で着物・帯留コレクターの池田重子さんの展覧会を観て、帯留の世界に魅了されたのが大きなきっかけです。
根付ももちろん好きなのですが、珊瑚の根付は数が少ないことに比べ、珊瑚の帯留は目にする機会が多く入手しやすかったのと、それ以上に珊瑚の色合いを活かした花などの彫りの見事さにすっかりハマってしまったのです。
今回、そんな理由で収集した帯留を、僕の作品と一緒に展示いたします。
珊瑚の魅力を知っていただきたいのと同時に、普段、僕が何を参考に勉強をしているのかを知って見ていただけましたら嬉しく思います。
- 2022/01/23(日) 18:36:26|
- 森謙次(高知)
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明日から森謙次展「珊瑚の国の人」が始まります。
1月に入ってからのコロナウィルス感染症の急激な感染者増加で、東京都にもまん延防止等重点措置が発令されました。
それに伴い、
花影抄でもご来店のお客様の人数制限(展示スペース内)を5名から3名に変更させていただきます。
ご予約もお承りますので、お電話やメールにてご連絡ください。
03-3827-1323 / mail@hanakagesho.com(件名を「ギャラリー来店予約」としていただくとスムーズです)また、個々ご予定もあるかと思います。当日混雑状況のおうかがいのお電話などもご遠慮なくくださいませ。
また、5名から3名に減らしたことにより、お待ちいただく場合があるかもしれません。
換気もしておりまして、寒い日々も続いておりますので、どうぞあたたかくしてお越しください。
また、お待ちいただいておりますお客様がいらしゃる場合、鑑賞時間を30分程度で
お願いすることとなり、お声をかけをさせていただくこともあるかもしれません。
ご協力を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
以下、その他のご案内となります。
●営業時間は13~19時です。(最終日30日は18時まで)
●店内は窓を開けたり、サーキュレーターを使い換気を気を付けております。
入店時の手指の消毒、マスク着用はこれまで通り、ご協力をお願いいたします。
●少しでも体調に不安のある方は、ご来店をご遠慮くださいませ。
(小さなものであっても咳の症状がある、微熱がある、頭痛がある等、普段と体調の差異を感じられる場合)
●スタッフは体調管理、マスク、手指の消毒を徹底してお待ちしております。

- 2022/01/21(金) 12:46:22|
- 店舗営業のお知らせ
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今年のアートフェア東京も3月に開催されます。
Gallery花影抄ではプロジェクツエリアにて、かわさきみなみをご紹介いたします。
かわさきみなみは千葉県出身。
羊毛を素材とした立体作品を主軸に塑像作品、平面作品やレリーフ作品なども発表しています。
今回のアートフェア東京では、立体作品、平面作品を展示いたします。
アートフェア東京2022
日時:2022年3月11日~13日(10日はご招待のみで開催)
場所:東京国際フォーラム プロジェクツエリア(B2Fセミナールーム)

これまで3回ほどプロジェクツエリアにてアートフェア東京に参加してきましたが、
B1Fのロビーギャラリーにあったプロジェクツエリアも、今年はB2Fの本会場の横の
セミナールームに移動し、新しい場所でのご紹介となります。

かわさきみなみ 「いっしょにいるよ」 20×12×7.5cm
※こちらはアートフェアにてご紹介する作品です。サイトをはじめ、SNSなどでも最新情報の発信をおこなってまいります。
かわさきみなみさんの活動にもどうぞご注目ください。
▼かわさきみなみ デジタルコンテンツ
Twitter:
twitter.com/KMinami89Instagram:
instagram.com/kawasakiminami89webサイト:
https://kedarake.jimdofree.com/
- 2022/01/13(木) 12:16:57|
- かわさきみなみ(千葉)
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2022年の営業を1月8日(土)より始めます。
寅年の一年を楽しく充実した活動ができるようにスタッフ一同励んでまいります。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
2022年 1月の店舗営業についてのご案内です。

先月同様、ご予約がなくてもオープン日はお越しいただけます。
引き続き、ギャラリーの収容人数を5名でご対応いたします。
(状況によっては急な変更もあります)
●今月の展示は、「森謙次展 珊瑚の国の人」を開催予定です。
会期 2022年1月22日(土)~30日(日) 24日(月)休廊
(ご予約優先制での開催ですが、ご予約がなくてもお越しいただけます。お好きなお時間にお越しください。)

詳細は以下の通りです。
●営業時間は13~19時です。(最終日30日は18時まで。)
●ギャラリーへの最大収容人数を5名程といたします。
・5名より増えてしまった場合は、お待ちいただく場合がございます。
・森謙次展ではご予約をご希望の方にはお受けすることとし、いただいた場合は優先的にご案内いたします。
ご予約可能な日はカレンダーのオレンジ色の日です。お電話か、メールにてご連絡ください。
電話番号 :03-3827-1323
メールアドレス:mail@hanakagesho.com (件名を「ギャラリー来店予約」としていただくとスムーズです)
●店内は窓を開けたり、サーキュレーターを使い換気を気を付けております。
入店時の手指の消毒、マスク着用はこれまで通り、ご協力をお願いいたします。
●少しでも体調に不安のある方は、ご来店をご遠慮くださいませ。
(小さなものであっても咳の症状がある、微熱がある、頭痛がある等、普段と体調の差異を感じられる場合)
お越しの際には皆さまのご協力をお願いいたしますが、何卒宜しくお願い致します。
- 2022/01/06(木) 14:51:00|
- 店舗営業のお知らせ
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