拝啓 初秋の候 秋の訪れを夜の涼けさで感じてきた頃、
生存報告の為、筆を執った次第で御座います。
ご無沙汰しております。ドーモ 道甫です。
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先日、原美術館の加藤泉 LIKE A ROLLING SNOWBALL展に行ってきました。
この展覧会は原美術館(東京都品川区)と
別館ハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)で同時開催されていて、
原美術館の方は新作を、ハラ ミュージアム アークでは代表作を展示しています。
群馬に行くにはちょっと遠いので、近い方に行ってきました。
加藤泉氏の作品を強く意識したのは、scp Foundation
というコンテンツに出てくる、scp-173という作品でした。
scp Foundationとはインターネット上で架空の伝奇・怪談・都市伝説を
シェアワールドして出来たコンテンツです。
scp-173はその中で加藤氏作「無題2004」を
4chan(外国の2チャンネルみたいなもの)ユーザーが
勝手にホラー伝奇的設定をつけてできたキャラクターです。
ある種の物語設定資料集みたいなSCPコンテンツが好きで、
そのコンテンツに使われる力を持つ加藤泉氏の作品を
見たいと思っていました。
現地について観覧していますと感じることがありました。
ぱっと見不気味コワイ感じですけど、
実際作品に対峙しているとなぜか落ち着くのですね。
とても不思議な感覚でした。
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立体より絵の方がその落ち着く度合いがあるのです。
そういうなぜ?謎という感じで自分に問いながら見回っていました。
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今も思うことがあります。
scp-173は「無題2004」を二次利用して生まれたものです。
所謂同人作品です。
作者が意図していない違うストーリーが作品に付与されています。
私にとって作家が意図しない見方でも認識されているという事実は
とても羨ましいものです。
それは作品に魅力がないとできない事です。
私が思うに、根付は作者の意図も所有者のストーリーも
投影することができる器具でもあると考えています。
なので作者が意図していない違うストーリーをつけても
平気というかむしろつけてほしい欲があります。
私もSCPみたいなコンテンツにシェアされてみたいものです。
そのために力がある作品を作れるよう頑張りたいです。
ps もしハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)に
行くことがありましたら、是非「無題2004」を発見してみてください。
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- 2019/09/29(日) 16:01:01|
- 道甫(千葉)
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皆さまお世話になっております。作家のカタクラです。
空気も肌寒くなり、過ごしやすい雰囲気になってきました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
普段引きこもって制作を続けていると
自然と世相の情報に触れる機会も多くなり、
暗い気持ちで机に向かう事も多いので
気をつけねばなと感じる今日この頃です。
で、今月は根付のお話しを書こうかと思います。
ブログを見ていただいている方には既知の事柄かと思いますが、
しばらく根付作品を主軸にやっていこうという身なので、
どうかお付き合いください。笑
先日縁あって、コレクターさんからイチイ一刀彫のコレクションを
拝見させていただく機会に恵まれました。許可をいただけたので、
ご迷惑にならない範囲で写真をいくつか載せていきますね。
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ずらりと並べた図。量もさることながら、
コンセプトがはっきり見える素晴らしいコレクション。
作家たちの家系も知りながらコレクションされてるので、
作品を起点にお話しを聞いていると
一族の物語を聞いているような気分になります。
歴史の面白さというか、作品のバックグラウンドを聞く事で
一つ一つの作品が繋がっているのだなぁと感じました。
また、同じ構図・モチーフでも作家によって工夫の差異、
省略の仕方、メリハリの強弱と学ぶ事も多く、
また手に入れた時のエピソードなど興味深く聞かせていただきました。
改めてありがとうございました。
実はこの時、作家の坪島悠貴さんとギャラリースタッフさんと共に
見させていただいたのですが、「リアルロボットよりスーパーロボット寄りよね」
とかオタク目なトークをしつつ作品を触って感触を確かめていました。
きっと周りの方は何を言っているか分からなかったと思います。笑
個人的にグッときた作品をいくつか。
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↑省略の仕方が絶妙な海老。
少ない線でそう見えるように仕向けるのは、
事前の綿密なデザイン立案と、正確なライン取りが必要そう。
頭の部分もそうなんですが特に目を見張ったのが脚の部分。
リアルさを追求すればするほど複雑な造形になりがちな部分を
少ないラインと面で見せてる。
昆虫を普段モチーフとして扱ってる自分としても
いつも悩むところなので、参考にしたいところです。
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↑雄鶏くん。
首、肩、翼、腹の丸みに対して、トサカ・尾羽のメリハリ。
一刀彫らしいエッジの残しかた、羽の表現、
なんというか、あえて細密に彫らず省く事で
見る側の想像の余地が残されている気がする。
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↑雌鶏ちゃん。
先の雄鶏に対して全体の丸みがやや強めなんだけど、
ポリゴン感が強いというか一つ一つの面自体は結構大きい印象。
先の雄鶏とは逆で羽先に白太部分が出ており、
うっすらお腹の下に見えてる部分は白太を利用して卵が彫ってあります。
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↑モチーフとしては鴨か水鳥か。
頭から首にかけての丸みに対し、翼と胴体の面の大きさ。
経年変化もあるだろうけれど、角の丸みが自然と手に馴染む。
坪島さんも鳥類モチーフの作品を見ながらたまらん!と呟いてました。
彼のトランスフォームする作品に一刀彫の要素加われば、
さらに自由な変形を展開出来るのでは?と
勝手に心の中で思っていたのは秘密です。笑
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↑兎さん。
構図としてはオーソドックスな座り姿、握ってて気持ちが良い。
例えば細密な造形の中に突然ただの線彫りされた部分が有ると
物によっては残念に見られがちだけれど、
一刀彫の雰囲気であればむしろ線彫り活きてくる感。
なんというか頭から胴体にかけてポリゴンを荒くしていく事が
上手なメリハリの付け方な気がする。
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↑この蝙蝠よかったなぁ。うまく言語化出来ないけれど、
嫌な意味ではなく限界まで削ぎ落としたデザインにすることで、
どこをどう削るか凄く考えられているはずなんだけど、
それを感じさせないようにゆるい雰囲気が出てる気がする。
翼の先とか尖っている造形ではあるのだけれど、
見た目以上に手にしっくりくる。
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↑この蛇も良かった。
おそらく塒の巻き方と胴の太さが鍵だとは思うのだけれど、
大蛇のような貫禄を持ちながら可愛げも出てる。
頭の部分にだけ鱗を彫る事で、
全体がどうゆう鱗模様なのか想像したくなる。
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↑ラストはおそらくおかめさん。
これまでの作品に比べると面モチーフなのか
細密寄りの造形に見えてくるけれど、
ポイントになる口周りはしっかり作りこんでる印象。
白太の残し方がまるでチークを塗ってるような雰囲気。
こんなところでしょうか。自分としては
「根付は本来使うものである」という認識を持ちつつも、
どうしても一点一点の作品に「もっと作りこまなきゃ!
もっと複雑にしなきゃ!」と思いがちなのですが、
こうゆう一刀彫の見せ方がむしろ
普段使いされている根付には必要なのでは?
こうゆうデザインだからこそ、普段からポッケにいれて握ったり
たまに出しては眺めてにっこりするような、そんな使い方が
現代には合ってるのかもしれないなと感じた次第です。
一刀彫をやってみました!というコンセプトで
作品を発表することは出来ないけれど、
シンプルな造形をうまく活用するという部分は
是非参考にしたいところですな。
ではでは、師走に向けて忙しくなる時期ではありますが、
皆さま御自愛ください。
Twitter→ @moyamoyakurakur
Instagram → kenta_katakura
2019年 9月 カタクラ ケンタ
- 2019/09/28(土) 18:49:17|
- カタクラケンタ(千葉)
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ご無沙汰しております、金属造形作家の坪島です。
ブログを書こう書こうと思いつつ
すっかり日が経ってしまっていて申し訳ありません。
いざ書こうとすると、あれも書こうこれも書こうとまとまらなくなってしまい、
結局書きあがらない負のサイクルに嵌まってしまっております。
一方Twitterの方は140文字内という制限があるおかげか、ハードルが低く続けられています。
私の場合これは制作にも言えることで、
「なんでも自由に作っていい」と言われるより、何か制約があった方が上手くいく傾向があります。
現在の"変形する"というテーマも、変形という制約によって、
「限定された選択肢の中から最適な形を見つける」というやり方が性に合っているのだと思います。
ということで今回はブログ用に1から文を書くのではなく、
最近のTwitterの投稿の抜粋と、それに関することを補足として書くという方法でいこうかと思います。
https://twitter.com/hau9000/status/1150032808154320904https://twitter.com/hau9000/status/1154615587651219458.jpg)
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・7/13、7/26の投稿
少し前になってしまいますが、
夏のワンダーフェスティバルに持って行った「可変メメント・モス」という作品についてのツイートです。
現在作品は花影抄さんに納品させて頂いています。
映画「羊たちの沈黙」のポスターなどで有名なメンガタスズメという髑髏のような模様のある蛾をモチーフに、
髑髏から蛾に変形するという作品です。
根付作家の至水さんが最初のツイートに対するコメントで、
このモチーフから「輪廻転生」という意味合いを読み取ってくださっています。
私が変形作品を作るうえで何となくイメージは持っていたものの、
それまで不定形であった感覚を、正にこの言葉で言語化して頂けた気がしてとても嬉しく思いました。
蛾の状態ではペンダント、髑髏の状態では根付、またはペンダントとして使用できるようになっています。
変形に関しては、髑髏から蛾にする際に最初のロックを外すのに少々コツがいる以外には難易度は低めです。
金属作品の場合、変形における可動部は関節の渋みによる固定が期待できないので、毎回頭を悩ませています。
今回は熱処理によって素材である銀に硬さをプラスすることでバネ性を加え、爪を嚙合わせるロック機構で、
パチンと小気味よく固定する事に成功しています。
前述のとおり少しコツのいる髑髏状態からのロック解除ですが、
慣れてくるとパーツの一部がパチッとスライドして外れる気持ちよさに共感していただけると思いますので
是非ギャラリーにて実物ご覧いただけると幸いです。
https://twitter.com/hau9000/status/1175296113852596224.jpg)
・9/21の投稿
来年に向けて干支に因んだ新作についてのツイートです。
数ヶ月前から少しづつ進めていたのですが中々まとまった作業時間が取れず、
今回ようやく形になってきたところでモチベーション維持の為も兼ねてツイートにてお披露目させて頂きました。
干支モチーフは以前から意識はしていて、
去年制作の「可変狛禽」も鳳凰から狛犬に変形という酉年→戌年にかけた裏テーマがあります。
一方今作に於いては今年で干支が一巡したこともあり、新しい取り組みとしてシリーズ化、
つまり共通の変形元からそれぞれ干支モチーフに変形するという想定の下にデザインしています。
以前から根付として使いやすい形状のものを作らなければという思いもあり、
変形元は饅頭根付型を選びました。
饅頭根付という共通の形状からそれぞれの干支に変形するので、
それこそ制約だらけの中どれだけその生物の特徴に沿った形を見つけ出せるか、
挑戦の連続になりそうです。
自分の投稿に対する補足という形で書くとやはり色々書きたいことが出てきて結局長くなってしまいましたが、
内容は限定されるので負担なく続けられる気がします。
最後までお読みいただきありがとうございました!
それではまた次回、どうぞよろしくお願いいたします。
坪島
- 2019/09/27(金) 19:31:39|
- 坪島悠貴(東京)
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もう9月末だというのに、暑さがなかなか引きません。
体調など崩さぬように、どうぞ皆さまご自愛ください。
来月10月の店舗営業日のご案内です。
守亜展がありますが、いつもと違い、火曜日(祝)に始まります。
10月もどうぞよろしくお願い申し上げます。

※お休みの日にどうしてもご来店いただきたい方はご相談ください。
ご対応出来る範囲でご予約をお承りいたします。
- 2019/09/26(木) 11:59:43|
- 店舗営業のお知らせ
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ガラス作家の秋葉絢さんが、長野県諏訪の北澤美術館にて個展を開催します。
秋葉絢 ガラス展
場所:北澤美術館 ギャラリーにて
日程:2019年9月28日(土)~11月7日(木)
休館日:10月1日(火) 時間:9:00~17:00
入館料:大人1,000円、中学生500円、小学生以下無料
(北澤美術館内の展示すべてご覧いただけます)
北澤美術館
秋葉展ご案内サイト
Twitterでも何度かお知らせしていますが、今回ギャラリーでは撮影のお手伝いなどをしています。
新作に加えて、以前制作した意匠で再び制作した懐かしい作品も並びます。
諏訪ならではの作品も出品されるようです。
東京からは少し遠いですが、観光に良い季節になってきますのでどうぞ足をお運びください。
■招待券プレゼント ■
お二人様入館できるご招待券をご希望の方にお送りします。
(5組限定)以下のメールアドレス宛にご応募ください。
件名を「秋葉展招待券希望」とし、お名前とご住所をお知らせください。
応募先アドレス:mail@hanakagesho.com
よろしくお願い申し上げます。
- 2019/09/16(月) 13:57:58|
- 秋葉絢(神奈川)
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本日の黎明、野分(台風)の風雨の声、烈し。
9月9日の台風一過の後の酷暑、猛烈にして、夏戻るとか、
皆さん御自愛を・・・。
変った夏風情
梅雨に濡れそぼつ紫陽花は、鬱々とした気分に
晴々しさを与えてくれる風情の植物で、
夏の到来と共に役割を終えて、花も失せるものと思っていた。
何年も前、家内が一本の苗木を植えた。何の苗だか解らないと云う。
数年、根付いているのを確認はしてきたが、花は持たなかった。
去年初めて、子供の握り拳ぐらいの花を付けた。
紫陽花に似るが、となりの紫陽花とは幹と葉も違っている故、解らぬまま過ぎた。
今夏、普通の紫陽花の来年の為の剪定が終わった頃、多くの蕾が現れた。
始めは純白で、普通の紫陽花程の大きさで、丸くはなく卵形である。
伊豆大島紫陽花園で見た種類であることが解った。
思いがけなかったのは、梅雨明けから咲き始め、
酷暑にも負ける事なく、未だ花弁も地に落ちていない。
純白の花がグリーンに変わってくるのも不思議だ。
この花が散れば良き季節の到来という基準にしてきた百日紅(さるすべり)に加え、
この花も酷暑の盛りを知らせるものとなった。
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一角獣
このモチーフは、麒麟同様に誰でも知っているものであるが、
古典から現代根付まで非常に例が少なく、私でも二点か三点しか記憶がない。
一本角の馬なのに、何故か?
古今西洋の名画にはよく描かれてはいるのだが。
想うに、このモチーフは根付としての図が付けにくい事
(角を根付として如何に処理するか)からか。
観る人の評は自由であるが、創る者にとっては難解な知的作業が要る。
暑さの中、頭がボケない為(もう既にボケているかも知れないが…)一角獣を試みてみた。
材は鹿角、前回ブログの一角獣は注文の図であって、
象牙で自由に取れた形ながら、デザインに堅苦しさを感じていた故、
より自然さを出せたらと心掛けた。
しかしながら、鹿角材には、形状的制約がある故に、
額に汗しながらこの様に持っていった。
一角獣ではなく馬の根付ならもっと自由に楽しめたのにと、
猛暑日の続く日々の仕事場でした。
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- 2019/09/11(水) 20:12:40|
- 齋藤美洲(埼玉)
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ふわふわの猫を愛し、趣味はお菓子作り、夜はイチゴ柄の布団で眠る
彫刻家のねがみくみこです。
好みのタイプはケイン・コスギです。
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太平洋側で生まれ、関東の山の中で育ちました。
子供の頃は、お前たちピザを食べたことがあるか、と
街の人達に蔑まれながら育ちました。なにそれ おいしいの?
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ブルーシートハウスが立ち並ぶ閑静な公園近くの大学で6年、
塑造と木彫を勉強しました。卒業後は彫刻家で制作活動を続けてきました。
歳は聞かないでください。
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現在根付を勉強中です。
ギャラリーの先輩方から色々なことを教えてもらいながら、
コツコツと続けていければと思っています。
暖かい目で見守っていただけると幸いです。
- 2019/09/07(土) 12:20:22|
- ねがみくみこ(東京)
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「婦人画報」 2019年10月号の連載「レンズを通して」にて、森謙次さんの作品を御掲載いただきました。
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森謙次「読書」 2012年制作 ※掲載は17ページ
読書の秋というテーマで根付をご紹介いただいています。
この作品はチョウチンアンコウが自分の提灯で手元を照らしLEDの本をみているという図。
可笑しみのある作品とともに、読書について書かれています。
ぜひ手にとりご覧ください。
「婦人画報」-(ハースト婦人画報社)-
webサイトはこちら。
- 2019/09/06(金) 15:02:01|
- 森謙次(高知)
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