我家の百日紅が見事に開花した。夏の花の代名詞はひまわりと云う人が多いが
私はこの花を選ぶ。なぜなら、秋風が暑熱を追い払うまで咲き続け、九月にも忍び音
をもらしながら、艶めかしさを想わせる紅色に、うんざりさを感じるからだ。
現代根付史私感四月、京都清宗根付館に遊び、観る。
前回書いた如く、メランコリックな心情の故にか、他作家の仕事が良く見えた。
「夢」という御題の部屋の競作は興味深く、各作家おのおのの心情、思索、教養が推し量られ長い間楽しめた。
特に若い作家の意気込みを感じられる作品には、現在という時間の真っ只中にそれを体現している若い人
だから出来る、新しい根付の可能性を感じる。表現、技法も変化するのは時の移ろいであろう。
1970年、キンゼイご夫妻が、現代根付を出版すべく来日した。
その時の根付作家たちが、古典のコピーではなくオリジナルを創れ!!という夫妻の言葉に呼応したのが、
現代根付の夜明けであった。その時より既に40年以上を経た。
時代、時代によって作風も表現も変わるのは、時の移ろいであって、
それは当然であるが、根付の定義は崩すことが出来ないことを踏まえ、
大きな意味での変化の様子を述べてみたい。
「社会的背景」私は、70年代より日本のバブル崩壊までを前期とし、それより現在までを後期としたい。
(インフレ期とデフレ期に見える様に日本全体が一変した如くに見える。)
大英博・ロスカウンティ展が、前期の集大成といえる。
後期は、バブル崩壊による長い間のデフレーション時代と、それに伴う不況の時代である。
前期との間に、将来に対する希望が違う様に思われる。
さらに円高進行がある。1ドル360円の時代に現代根付が始まり、今では100円。
欧米のコレクターにとって4倍の高値になる。
外国の市場が難しくなると同時に、輸入する古典根付が国内で安くなり、
現代根付はそれと競わなくてはならない。
「根付学習背景:徒弟制から教室へ」若い作家にとっては根付を学ぶ環境も変わった。徒弟制は絶え、教室で学ぶしかない。
何故徒弟制が絶えたのかといえば、弟子に学ばせるための仕事が失せたからにすぎない。
安価根付が中国根付に変わられたこと、象牙の輸出が禁止されたことが原因。
徒弟出身の作品には型があり、先生を言い当てられたが、
教室出身者は自ら型を作らねばならぬ苦労があるだろう。
現在、若い人の中で、徒弟経験のある人や彫金、鋳金の人たちには細部への眼があり、
自己の型を発見した人が数人いる。将来、これらの作家が、根付界をリードしていくと思われる。
幸いにして、今日では学ぶ人たちは多くの参考作品を観ることができる。
東京国立博物館の高円宮コレクション室には前期の秀作がある。
京都清宗根付館では、前後期を通じて多数の作品が見られる。
同館では新人根付も蒐集している。
厳しい選考ながら、根付彫刻の登竜門となっているのは有難いことと感謝している。
「美術的背景:抽象からスーパーリアリズムへ」作品鑑賞には、その時代、時代の風潮を基にして観る傾向が有る。
前期は戦後から、抽象運動が始まり、日展日本画ですら、抽象表現の作品もあった程だった。
古典根付を評価する時も、技術より造形的本質を論じ、
造形が的を射て居れば技術で見せる作に勝る、そんな想いが根底に有ったと思う。
現在は、スーパーリアリズムが注目される時代。
根付を志す若者たちも、明治以降の作品に憧れを見せる。
よって、技術で見せる可く、彫り込んで作品とするものが多い様に見受けられる。
ある根付愛好家の評に「現代根付は彫り過ぎではないか」とあるが、
是、日本美術特有の"間の美意識"の認識と云うことか。
「精神的社会背景:アナログからデジタルへ」パソコンは、ここ20年間で一般的になった。
知識を得るという意味では、各自が図書館を持った事に成る。
一枚の写真を得る為に、時間を要したのと比べ、革命的な差である。
よって、人に聞く必要もない故、一人の世界を作り上げる。自信も得る。
アナログ人間には解らぬ人格であり、どこかが違う様に思う。
特に作品評には注意する。
ある社会心理学者が言うに、若い人に論文等の間違いを指摘すると、人格を否定されたと思う様だと。
同感で、私も要注意し、言葉も選ぶ。
孤独とオタクの差を感じる。
孤独の作家は、人の意見を聞く事で己を高めようとし、オタクは自分の世界を侵されるを嫌う。
アナログ人間の僻みでしょうか。
その他、御店(オタナ)と云う買上げ制から委託制へ等々、社会的変化は様々に変化している。
私は保守でもなく、懐古趣味でも無い故、これらの変化に如何に生きるかを考えている。
只、社会は変われども、根付彫刻の根底には、崩してはならない定義、定理が有ると確信する。
私が根付の定義に付いて見解を述べるよりも、
ロダンの正確さに加えマイヨールの温かさをも加味した彫刻家朝倉文夫の
「彫塑余滴 美の成果」よりの一文を持って見ると、良く解ると思う。
骨董の文字を根付と置き換えると面白い。
「触覚の面白さという云うものは、必ずしも丸いが故に良いという分けではないけれども、
ごく原則的にいえば、そこに多分に良さがある。
大体、私が骨董を好む所以のものは、比の触覚の良さが第一である。
手にして、愛玩する、これが、骨董の第一のうれしさである。
それは即ち、触覚にうったえるものを楽しみに鑑る境地の、よろこびである。」
(「彫塑余滴 美の成果」より)
朝倉は、自らの触覚を刺激するもののひとつとして、根付をコレクションした。
如何ですか?根付の定理を言い当てているとは思いませんか?

暑中お見舞い申し上げます。
先日、美洲さんの工房へおじゃましました。
工房のまわりは、冒頭にあった百日紅の花が覆いかぶさるようにたくさん咲いていて、
日よけになってくれているようでした。窓から漏れる光の方をふと見ると、守宮が!
今年の個展に並んでいた守宮の作品が頭をよぎり、美洲さんの工房は何かに守ら
れているようにも感じました。(スタッフ木塚)
- 2014/07/30(水) 22:00:12|
- 齋藤美洲(埼玉)
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なみだ

「なみだふいてよー」
泣き出すと笛は必ずそう言います。
何をおいてもまずは涙を拭くことなのです。そうしないと次に進まないのです。
僅かに反抗的な気分も漂わせながら、他のどんな要求や悪態よりもとりあえず先に言うのです。
あるいは自分を落ち着かせようと小癪にもを考えているのかもしれません。
そこで僕は小さなタオルを渡してやります。
涙は、拭っても後から後からどんどん溢れてくるのに、何度も何度もタオルは必要になるのに、
笛は一度使ったものを僕に返してよこしたりするものだから、
またびしょびしょになって「なみだふいてよー」は繰り返されます。
一色海岸

一色海岸はいいところだな。穏やかで。とても小さな佇まい。
海水浴のシーズンはなんだか洒落たような海の家なんかもいくつか出来て賑やかになるけれど、
ぎゅうぎゅうした感じになるほどではない。
近くに車がビュンビュン通る道路がないのがいい。
湘南の海はほとんど国道が背中にくっついていてそこをまたいで(またはくぐって)浜に出るけど、
一色海岸は静かな住宅地を抜けて松の木が生えたえた小さな公園の向こうに小さく弧を描いて広がっている。
公園から見下ろすと海岸の左のはしっこに突き出た小さな岬には芝生が生えていて、
ここが夢のようにいいのです。
6月に東京都美術館の「バルュテュス展」と六本木森アーツセンターギャラリーで
「こども展」を見に行ってきました。ああ、よかったです。とても。
すごいな・・・
2014.7月 森栄二
- 2014/07/29(火) 22:00:16|
- 森栄二(葉山)
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こんにちは、かわさきみなみです。
先日、出掛けた帰りになんとなく立ち寄った古本屋さんで、
いわさきちひろの作品集を3冊見つけました。
形は正方形に近い形で、B4くらいの大きめの本。
大きなページにのびのびと絵が配置されていて、紙の質感もやわらかな絵に
ぴったり合っていて絵の世界にすっと入り込める作品集でした。
何か買うつもりではなかったのに「これは…!」とすっかり気に入ってしまって
3冊全部買ってしまいました。
最近は制作するときこの本をそばに置いてときどき眺めたりして楽しんでいます。
私はいわさきちひろさんの絵を見ていると海や空を見ているときと同じように
すうっと心が広がっていくような心地よさを感じます。
少ない線と色で描かれたシンプルな絵は、ぱっと見ただけで絵の中の空気が
どんなものか、頭の中でどんどん想像が広がっていく。
そんな作品の空気がすぐに感じられるこの表現はどうすればできるのだろう と憧れています。

この写真の、本と一緒に写っているのは個展後すぐに作った試作です。
個展でも展示していた羊毛で描く絵は表現の方法をもっと突き詰めていったら
私なりの表現で空気の広がりを感じられる作品が作れるのではないかと思っています。
今は羊毛絵画のより良い見せ方を試行錯誤中です!
かわさきみなみ
※かわさきみなみ情報 : 8月にグループ展に出品します!
アニマルマニア ~総勢30名のアニマルアート作品が大集合!~【会 場】 FEI ART MUSEUM YOKOHAMA
【会 期】 2014年8月19日(火)-8月31日(日)
【開館時間】 10:00-19:00 【休 館】 月曜日
- 2014/07/28(月) 15:00:00|
- かわさきみなみ(千葉)
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今年も無事に展覧会を終えることが出来ました。
色々な方に応援頂き、自分なりに毎年成長をお見せしなくてはならないとひしひしと感じております。
今年は「江戸美人」をテーマにしましたが、私の内々のテーマは「人物の柔らかさ、しなやかさ」でした。
展示をするとその事で、作品が私にとっても初めて作品となり、出来ていない部分もより際立って
見えてきます。皆様の様々なアドバイスも含め、暖かいお言葉と共に反省を生かしながら、
次はもっと出来る!と、前向きな気持ちになれるのも、皆様のおかげです。有難うございました。
泉水
※泉水さんは、秋のアートフェアにも参加予定です!よろしくお願いします。
- 2014/07/27(日) 17:00:38|
- 泉水/北澤いずみ(東京)
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月刊美術2014年8月号、特集「この新人が欲しい!」は、
イチオシの93点として、新人作家とその作品の紹介と誌上販売企画となっております。
期待の新人作家たちの丁寧な紹介文章と写真で構成されていて、ページをめくるのが楽しい一冊です。
壽堂の新作「自在龍」、新人根付作家(NETSUKE-SHI?)・道甫も紹介されております!
何卒宜しくお願い申し上げます。
月刊美術のwebサイトは、こちら!
壽堂「自在龍」(おそらく現存確認されている「龍の自在置物では最小サイズ)

道甫(クトゥルフ神話を題材にした根付と提物)
- 2014/07/24(木) 10:07:18|
- 掲載メディア
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5月ぐらいから7月にかけて、三重県の地元若手作家の作品を数点購入しました。
僕は、小さい作品が好きなので(部屋に飾るスペースの加減もありますけど)、よく作家さんに「小さい作品を作って~」と言ってますが、今回も購入した作品は全て小さいです。
あと、若い人の作品は将来どんな風な作品を作るのか期待を感じられるのが楽しみです。
とりあえず自分に無理のない程度で楽しんでます。
いくつか作品をご紹介をします。
亀山在住の平松典子さんの作品は、
油彩の引っかき技法で描かれた作品で、昨年の個展を見た時より、小さい作品を譲って欲しいと言ってて、やっと叶いました。抽象ですが、今一番気に入ってる絵画作品です。

鈴鹿在住の岡本優希さんは、ネイリストでもあるので、
作品は繊細で色あいが優しいのが好きです。(つけ爪に描かれた繊細な絵を見た時はさすがネイリスト!って感心しました。)今回の絵はパステルで優しい色あいが気に入ってます。

玉城町在住の彫刻家であり、伊勢一刀彫作家の中野結衣さんは、
彫刻家として、daichiシリーズ(僕が持って作品はたぶん一番小さい作品ですが)の抽象的な大きい作品から、一刀彫作家として具象の干支彫りまでこなす人です。
彼女の作品展の折に、置いてあったポートフォリオに載っていた未の一刀彫が欲しくて、彼女に無理言って彫って貰いました。

伊勢一刀彫は角張ってるイメージですが、彼女の一刀彫は女性らしい柔らかい優しい印象です。(もちろん角張ってるはいるんですが…)
未さんは、一番目につく所に置いてあって、見る度にホッコリします。今までの干支彫りには無い、丸っこいフォルムがお気に入り! (^ー^)
男性が多い(彼女が唯一!?)伊勢一刀彫ですが、彼女らしい柔らかい優しい印象の一刀彫を頑張って作って行って欲しいです。(彼女としては彫刻家で身を立てたいかもしれないけどね。(笑))
次は僕の干支・辰の一刀彫を彫って欲しいんですけどねぇ…あまり無理言えないし…f(^^;
中野さんのように20代で伝統工芸の一刀彫の職人になってくれる人が現れることは嬉しいことです。
最近では、伊勢形紙に24才と25才の女性の後継者ができ、萬古焼は後継者養成に力をいれてますけど、伊勢根付はどうなん?…ですかね~?(近い将来、地元伊勢からは、なくなってしまいそうですけど…)
それはさておき、三重県の若い作家さん達も頑張っていい作品を作ってます!
紫苑でした。m(__)m
- 2014/07/18(金) 17:07:00|
- 紫苑(伊勢)
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永島信也が出品している「美少女の美術史」
青森県立美術館
2014年7月12日(土)~9月7日(日)※展覧会特設webサイト※青森県立美術館-webサイト開催前日の11日(金)、永島信也さんと青森県立美術館での内覧会に参加してまいりました。

この日、青森は台風接近の曇天でした。

緑の中の白い建物が、青森県立美術館。

青森県立美術館「美少女の美術史」オープニングのテープカット。(画面左側は、永島信也さん背中)

永島信也作品展示ケース

作品の展示ケースの前で。

内覧会中は、永島さんが自作の前で質問などにお応えしておりました。
「美少女の美術史」は、2010年に同じく開催された
「ロボットと美術」の続編という位置づけの展覧会です。

展覧会図録「美少女の美術史」内、永島信也紹介頁。
―浮世絵からポップカルチャー・現代美術にみる “少女”のかたち。
少女――それは日本美術のミューズ。
(青幻舎さんから書店でも発売です!)
※詳細は、青幻舎-webサイトで御覧ください。永島信也にとって、根付関連以外では、はじめての美術館企画展への参加となります。
江戸から同時代までの様々な作家と同じ並びで、多くの方々に作品を御覧頂ける機会を
頂きましたことを作家共々、嬉しく思っております。
永島がデビューしてから、今まで応援してくださった皆様に心より深く御礼申し上げます。
(Gallery花影抄/根津の根付屋 橋本達士)

青森県立美術館では、「あおもり犬」を拝んできました。大仏様のような存在感でした。
- 2014/07/13(日) 11:23:02|
- 永島信也(神奈川)
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今年の梅雨は昨年と比べて長く、雨も強く感じます。
やはり少ししか手伝えてないとはいえ、嫁の実家の田んぼや畑が気になります。
結婚するまでは工房の中で「のほほん」と制作していたので、
天気なんかはあまり気になりませんでした。
環境が変わると考え方も変わってきますね。
そんな事を思いながら、7月12日から
京都の着物屋”omo"さんというお店で
帯飾りと帯留の個展をさせていただくことになりました。

森謙次の帯留・帯飾りコレクション「帯する人の初夏から秋」
7月12日(土)~7月20(日)
※12日と13日に在店予定です!!
京都での個展は初めてなので、緊張しています。
とりあえず、帯飾りは妖怪、帯留は昆虫メイン(omoさんの希望で)の展示となります。
昆虫の作品は制作をあまりしたことがなかったので色々と試行錯誤の日々でした。
悩むこともあり、夜中3時ぐらいに目が覚めて、
ネットの昆虫画像をみて落ち着いて、また寝るという日も多々ありました。
そんなこんなで何とか準備しています。
興味のある方、是非ぜひ見に来てくさーい!
よろしくお願いします!
今月の根付川柳荷物持ち ぴょこぴょこ踊る もののけは
今回、妖怪のものを僕の中では数を彫った方なのでこういう感じになりました。


- 2014/07/09(水) 20:09:08|
- 森謙次(高知)
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日本橋三越本店 呉服売場で本日から開催の「夏の男のきもの 趣味の雑貨フェア」に
出品協力をしています。夏から秋にかけて活躍出来そうなアイテムを数点ですが出品
しております。

■左上より時計まわりに
ひなどり 中梶真武
柳左根付 流水 吉見普光
栗(羽織紐飾り) 山鹿
蛟 永島信也
角立て稲妻 道甫

羽織紐飾り「栗」山鹿、「竹に蛙」万征
※こちらは出品の一部です。
今回、初めて組紐師さんと組んでの羽織紐飾りも制作しました。まだ数点
ですが、お客様の反応をみてこれから増やしていきたいアイテムです。
着物を楽しむお客様へ、小物を身につける楽しさを味わって頂きたいです。
【日本橋三越本店 本館4階 男のきものサロン】
夏の男のきもの 趣味の雑貨フェア7月2日(水)~15日(火)
営業時間:10:00~19:00
- 2014/07/02(水) 13:02:28|
- アートフェア他(根津以外での展示活動)
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展示に足を運んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
今年は天気が不安定で、雨で足元が悪い日もありましたが、
たくさんの方に作品を見て頂くことができて大変嬉しく思っております。
今回の作品では心の動き、心の奥に見える形を表現しようとしていました。
このテーマには、もっと表現できることがあると感じています。
会期中に皆様に頂いた感想や意見を糧に 今後さらに作品を発展させていきたいです。
子犬達がこれからどのように成長していくのか 見守って頂けたら嬉しいです。
これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
かわさきみなみ

■今後の展示予定
来月横浜のギャラリーで行われるグループ展にも参加予定です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
アニマルマニア ~総勢30名のアニマルアート作品が大集合!~【会 場】
FEI ART MUSEUM YOKOHAMA【会 期】 2014年8月19日(火)-8月31日(日)
【開館時間】 10:00-19:00
【休 館】 月曜日

- 2014/07/01(火) 17:00:43|
- かわさきみなみ(千葉)
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