■Gallery花影抄として大事な御報告があります■□私たちは、アートギャラリーとしての規模を縮小し、本来得意としていた特化したジャンルに活動を再び凝縮していくことを決めました。
今後、現代根付を主とした一部工芸ジャンルの作家・作品に範囲を集約し活動していく計画です。
具体的には、2023年以降、彫刻・立体・平面など美術全般を視野にいれたアートギャラリーとしての「Gallery花影抄」の活動を小さくしていき、運営している「根津の根付屋」と「和こもの花影抄」の展開にあらためて注力してまいります。
現在、すでに決定している展覧会の予定、プロジェクトについては終了まで続けてまいります。
作家の方々、御客様方、お取引先の皆様におかれましては、ご迷惑やご心配をおかけいたしますこと恐縮いたします。
一部取り扱いの枠から外れてしまう作家の皆様へ申し訳ありません。
お詫びを申し上げると共に先々の活動について微力ながらサポートもしてまいりたいと存じます。
ご不明のこと、ご質問やご確認などございましたら、お声かけくださいませ。
何卒宜しくお願い申し上げます。■以下、弊ギャラリーの変遷を振り返りながら、ご説明も同時にさせていただきたいと存じます。
□Gallery花影抄は、2000年にカフェを併設した貸ギャラリーとしてオープンしました。
現代表の橋本は、美術大学で版画を学んで卒業して数年が過ぎたところで、いったん離れようとしていた美術の世界に再び戻って仕事をすることになりました。
オープン当時は、貸画廊がたくさんあり、カフェギャラリーのオープンも目立っていました。
カフェの仕事も、貸画廊の仕事も、お客様との心温まるコミュニケーションがあり充実した気持ちも持っていましたが、経営的には長い冬の期間でした。(その頃いっしょに並走していた仲間はいつの間にかほとんど閉店して、今は居なくなってしまいました。)美術作品を販売することで経営を押し上げていきたいと考えるようになり、貸画廊から企画画廊に移行していきたいと模索が続きました。
貸画廊から企画画廊へ変わるということ、ギャラリーを美術工芸品の販売によって経営維持していくためにどうすれば良いか?
当初考えを詰めていった答えは、自分のギャラリーのサポートによって「取り扱い作家の過半数がそのことによって暮らしている状態を作りだす」というものでした。扱う作家がそのことでご飯を食べているとすれば、おのずと自分もご飯を食べられる!というシンプルな考え方でした。(以後、今に至るまで自身の美術商としての根底にあり、ほぼその一点に注力してきたと言えます。)
企画画廊への移行を模索する中で「現代根付」という特殊なジャンルの美術工芸と出会い、特化したジャンルを扱う企画画廊へと変化していくことができました。この時に出会い導いてくださった現代根付作家のみなさんと根付収集家の方々には、本当に感謝をしています。現代根付のギャラリーに集約していく中では、それまで取り扱っていた様々なジャンルの作家のみなさんの取り扱いを止めていく段階がありました。そこには心苦しさもありました。本当に大きな舵取りとなりました。(2022年現在、再び同様の岐路に立っている状態です。)
現代根付の取り扱いを広げていく過程で、「現代根付界」と「美術界」の間の接点に興味と可能性を見出していくことになりました。デビューした若手の現代根付作家の活動領域の広がりと共にギャラリーの活動も広がっていきました。
ある程度広がり安定してきたところで、さらなる展開を考えた時、根付と類似点がある他ジャンルの美術作家(作品)も取り扱い、領域を相互に行き来することでさらに活動領域を大きく拡げていこうという考えに至りました。
ここで、立体造形・彫刻を主とする作家を取り扱いに加えチカラを合わせ、アートギャラリーの活動も本格的な再起動をしていくことになりました。
異なるジャンルの間の相互交流は、刺激もあり相乗効果もありました。ジャンルを超えて交流してくださった作家の方々、またコレクターの皆様には感謝を申し上げます。
いわゆる「現代根付業界」から「アート業界」に橋をかける時には、雑誌メディアの方々にも大変お世話になりました。それぞれの編集部のみなさまには、いろいろ教えていただき活動のための情報も多くいただいてきました。
スパイラルで開催されていた「THE ART FAIR PLUS ULTRA」へは、編集の方を通じて参加させていただくことになりました。数年の間、このフェアに連続して出展するのですが、ここで学んだことも大きかったと思い返しています。下町のギャラリーとして小さな世間で活動していたところから、はじめて大きな美術業界の広がりを感じました。
その後、短期間に取り扱いのアーティストの成長と共に、クラスの上のアートフェア東京にも参加していけるようになり、さらなる大きな世界に繋がるアートマーケットの一端に触れることになりました。カフェ・ギャラリーを運営していた頃にはお客として通っていたアートフェアに出展することは自分の中では本当に大きなことでした。いくつかのアートフェアに参加する中で、いろいろなスタイルの同業の方々にお話しをお聞きする機会をいただきました。そのような御縁から海外のアートフェアへの参加も誘ってさせていただいたことも貴重な経験となりました。活動の規模や範囲など様々なことを考えるきっかけとなりました。
この頃、主に初期からお世話をしている作家の作品と二次市場との接点が生まれつつありました。
根付の市場はアンティーク根付と現代根付と比較的はっきりと分かれており、現代根付の二次市場というのは長くあまり活発な状況ではありませんでした。そのようなことから、現代根付の新作を扱う私たちは二次市場への積極的な姿勢が低かったと言えます。
しかし、販売してきた作品たちはどのような状況であれ、時間軸の中ではいずれは次の持ち主に引き継がれていくわけです。
その流れに自分たちが関わり、取り扱い作家の価値に対して責任を持ち続けたいと思っていましたが、実際には実行するための具体的な計画や行動がなく曖昧なまま進んできてしまいました。
今日を生きている作家との接点、向き合っているお客様との間での努力は日々続いていましたが、その先にある美術市場との関わりについては、考えや態度を詰めきれていなかった、至らなかったということは否めない事実であり、今、深い反省があります。
この状況の中で、作家と自分たちの間で重要な作品が二次市場で知らない間に望まない形で販売されてしまうケースが起きてきました。
厳しい現実と直面し、どこまでが自分の責任であるのか?親しくさせていただいている同業者の方々を順番にお訪ねしお話しを聞き、自問自答も繰り返す中で、「やりたいこと」と「やれること」の距離感が明確になっていきました。作品販売、その未来について考えていくと、売った後も責任をもっていきたいという気持ちがあるのですが、現実的なギャラリーとしての活動規模との間ではギャップが大きく生じている現状は良く理解できました。
プライマリーギャラリーとしての活動とセカンダリーマーケットの間で、今現在はどのように活動軸を定めるのか答えはでていません。大きな美術市場の中で、私たちのような小さな規模のギャラリー(美術商)の責任について、どうあるべきか、どのように必要とされているか、できることはなにか、今一度立ち止まって考えたいという気持ちでおります。
□活動規模の縮小・集約については、作家とギャラリーとの関係性・活動密度の問題、自身の身心のエネルギー量や体調の問題、ギャラリースタッフの状況なども関係しています。多くの事々と向き合えば、薄まっていくこと、こぼれ落ちていってしまう残念なことが増えていきます。それは良いことではありません。自身の器と活動の質と量の問題をあらためて考え直すべき時期が来たということだと思います。
今、美術工芸作品を扱うということは、人間の心身((精神や思考・作品を作る人の心技体)と数字(価値の問題、資本主義経済の仕組み、そしてすべてに関わる時間)の間のバランスに向き合うことだという考えに至りました。それらと向き合うために自分たちには更なる学びが必要だと自省して、必要な物事・可能な物事を再検討する時間を持ちたいのです。一度、少し離れて俯瞰してみることも必要だと判断しました。
□あらためて、今まで取り扱ってまいりました作家の方々、私どもから作品をお買い上げくださったお客様方には、ご迷惑やご心配をおかけすることにもなり恐縮もいたします。
御理解をいただければ幸いに存じます。何卒宜しくお願い申し上げます。
2022年5月 Gallery花影抄 橋本達士
- 2022/05/09(月) 19:28:34|
- Gallery花影抄の活動についての御報告
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