根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り/ 「2017年9月/至水(北海道)」 〜ワンフェスのこと〜

「ワンフェスのこと」

何故に工芸系のGalleryがワンフェスに参加するのか?しかもディーラーとして!?

先月の花影抄Galleryスタッフによるブログ記事でなんとなく、今の時点での参加理由というか目的というか、「現代の置物としてのフィギュア」という見立て、その辺りが語られていましたね。

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「2017年7月30日(日) ワンダーフェスティバル夏に参加しました」
http://hanakagesho.blog17.fc2.com/blog-entry-1926.html


現在では工芸のなかでも「置物」というジャンルは取り扱いの難しい、売りずらい、売れない(涙)工芸品となっているようで、床の間文化も消えつつある昨今、ただただ飾って「置く」「物」としての「置物」の存在理由は失われ、需要も加速度的に縮小していくのでしょう。

存在理由の消失という点では根付も同じ歴史を辿って来たのではないでしょうか。
明治以降、和装から洋装への移行が進むと、必然的に提物を携行するにも帯に提げる必要が無くなってきます、つまり提物の留め具「根付」の需要も無くなると・・・これって根付職人存亡の危機ですよね。

一方明治6年に開催されたウィーン万博で日本が出展した象牙彫刻作品は、欧米で高評価を受けた事により象牙工芸品の輸出が増加、当時の根付職人達は根付彫刻のスキルを投入した欧米輸出向けの象牙彫刻作品「置物」の制作に移行していったと・・・

工芸品は基本的に「道具」です。
根付は「提物を提げる為の留め具としての道具」であり、置物は「床の間を飾る為の道具」、その最盛期から150年以上経ち、どちらも時代の変化と共に「道具」としての存在理由を失い消えて行く物・・・・・

ん?消えて行く?って、いやいや消えてないじゃない!?

根付に関しては昭和の根付師様先人達の努力と使命感により、「根付」は「現代根付」として再定義され、道具として製作されたアンティーク根付とはまた別の、美術工芸品としての側面を更にブラッシュアップしながら製作され続けて来たじゃないですか!

では現代の「置物」は・・・?

そこでGalleryの見立て、「フィギュア」を「現代の置物」として見れば、「現代根付」は「現代の根付」でしょう。

現代の根付「現代根付」の製作を生業とする現代の根付師「根付作家」が 現代の置物「フィギュア」を製作する・・・
根付職人存亡の危機という切羽詰まった悲壮感漂う背景は全く無いけれど、当時の「根付彫刻から象牙彫刻の置物へ」が、ワンダーフェスティバルという場で重なって見えたというミラクル。

実は「置物」も「フィギュア」という形で今も巨大な需要を生み続けているのだ!って見ると面白くないですか?

当然の事ながらワンダーフェスティバルにディーラー参加している根付師根付作家達の考え方や思惑はそれぞれ違うものだとは思います。
それでも「現代の置物としてのフィギュア」という見立てから、Gallery花影抄が仕掛ける企みにより、立体のサブカル「フィギュア」の祭典ワンダーフェスティバルという強大な力場に「根付作家」をぽつりと滴らせ現れた小さな「工芸」の滲みはじわりじわりと浸潤していくのかな、とか妄想したりして。

来年夏の仕掛けが今から楽しみな至水です。


画像1「BEELZEBUB」

素材は鹿角で工芸な現代の置物としてのフィギュア
で、意匠は至水の妄想ベルゼバブ!
カオスだわー(笑)

  1. 2017/09/11(月) 23:30:14|
  2. 至水(北海道)

作家便り17年8月/至水とプラモ屋

「プラモ屋のこと」


みんな今プラモデルって何処で買ってるの?
やっぱりamazonとかなの?
そもそもプラモ作らんのかな・・・


至水の幼少期、商店街の小さな雑貨屋とかスーパーの雑誌売り場の片隅とかに普っ通に置いてあったプラモデル。
一番最初に意識的にプラモデルを買ったのはロボダッチのライダーロボだった気が・・・


その後中学高校と行動範囲が広がると、「アサヒ屋」「ウォツ模型店」「富士模型店」「とり屋」そして模型少年至水のホームグラウンドだった「だるま屋」等、地元の函館市内にはいくつもの模型専門店が在る事を知りました。


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当時少年モデラーでサバイバルゲーマーであった至水はウィークデーならばほぼ毎日、学校から帰宅した後は模型仲間やサバゲ仲間、そして店主である「だるま屋のおじさん」と「だるま屋」が閉店する午後7時まで、やいのやいのと駄弁って過ごしていたのです。


専門学校卒業後、歯科技工士となった至水は仕事に忙殺され「だるま屋」を訪れる機会は減ったものの、それでも週末や祭日には折を見て「だるま屋」へ顔を出しました。

しかし昔の模型仲間も皆それぞれ忙しく、「だるま屋」で出会う事も少なくなり、昔と変わらずおじさんが煎れてくれたインスタントコーヒーを啜りながら「結婚はまだか」「歯科技工の仕事は順調か」「〇〇(昔の模型仲間)は元気か」等々々「だるま屋のおじさん」と二人で話しこむ事が多くなりました。


紆余曲折あり歯科技工士を7年で離職した後の全く畑違いの職に潜り込んだ13年間、「だるま屋」を訪れる機会は更に減り、店の近くを通った際にシャッターが閉まっている事が多くなってきたなと感じ始めたのが東日本大震災直後の1年くらい。

そして2013年以降「だるま屋」のシャッターが開く事はなくなりました。


一昨年、地元の社会人模型サークルが定期的に開催している作品展示会の告知をSNSで見つけ、暫くプラモから遠ざかっていた至水が何を思ったかふらりと展示会を覗きに行ったのは、あれはきっと呼ばれたのかなと。

会場で模型サークルの関係者の方とお話をさせて頂くうちに「だるま屋のおじさん」が前年に亡くなられていた事を知らされたのです。


今になって思えば「だるま屋」は模型趣味人のサロン的な場であり、足繁く通っていたあの頃の毎日は、今の至水に必須な「造形」というパーツを醸成する為のとても重要で大切な時間だったのだと思います。


今も本名を知れていません
でも至水にとっては「だるま屋のおじさん」

出来る事ならばもう一度お会いして

「おじさん根付って知ってる?」

「今オレ『至水』って雅号で根付彫刻を生業に出来ているんだ」

なんて、今の「至水」の話をしたかったなと・・・


超エモいノスタルジーが胸締め付ける

そんな2017年のお盆過ぎです。



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感謝しかない・・・
  1. 2017/08/17(木) 22:42:40|
  2. 至水(北海道)

「至水と蝦夷鹿角」

「蝦夷鹿のこと」

至水が根付の材として使う鹿角はほぼ全て蝦夷鹿の角です。

私自身北海道在住で知り合いに害獣駆除の資格を持つハンターが居り、その方から蝦夷鹿の角を譲って頂いています。

根付の材という観点から言えば蝦夷鹿の角は「悪い材」というのが通説で、
現在鹿角で彫られる根付はニホンジカの角を使用した物が殆どではないでしょうか。

二ホンジカの角は蝦夷鹿の角と同様に害獣駆除された個体の角の他に、
春日大社で毎年行われる「鹿の角切り」等で随時切られた角が現地で販売されていたりするので、
花影抄スタッフの方も仕入れに行かれます。

以前私もGalleryから奈良(春日大社)の二ホンジカの角を送って頂いた事があり現物を手にしておりますが、
生きた鹿の角を切るので、クラウンと呼ばれる根本の末広がりな部位よりも幾分上から切り落とされている為より細身な印象でした。

断面を見ると確かに白く詰まった部分が多く、中心に太目の導管が一つ空いているといった感じで。

01_二ホンジカ角
白いです、もっと白いのも普通にありますね。

一方蝦夷鹿の角は髄の面積が大きかったり、本来白く詰まった部位も黒ずんでいたり、
これが「蝦夷鹿の角は悪い材」と言われる原因なのだと思います。

02_蝦夷鹿角

でもこんな感じでも彫ります普通に使います。

しかし山中で害獣駆除され解体された鹿からその場で切り落とした角は、
クラウン直下の径が太く髄が殆ど入らない詰まった部位が採れたりもします。

クラウン直下から切れるという事は獣毛付きの鹿角もあり、
舟幽霊を彫った際には獣毛を利用した残ばら髪を表現出来ました。

funayurei.jpg


鹿の角は毎年生え変わり前年成長した角は脱離しますので、
運が良ければ自然に抜け落ち断面が丸みを帯びた「落ち角」に山中で出会える事もあり、
抜け落ちてからどれだけ経過したかにも依りますが、髄の中の淡泊質が分解され白みが増した蝦夷鹿角になっています。

ここまで二ホンジカの角と蝦夷鹿の角の違いを私観のみでダラダラと書き綴ってまいりましたが、
ネット通販が一般化した現在では、どちらの角もオークションサイト等で探せば結構簡単に入手出来てしまう訳で、
作家毎の使用する材の地域性というものは「事実上」失われており、あとはもう作家自身の拘りに依るものなのかなと考えていて。

そこで何故に至水は蝦夷鹿なの?と

蝦夷鹿の角を彫り始めた当初はもうホントに髄が嫌で嫌で、リカバリ不能な所まで髄の部位を削り落としすぎたりして、
そこまで掛けた時間と鹿角を無駄にして別の鹿角で彫り直しなんて事も多々ありました。

ところが、なんでしょう、なんと言うか、
いつの間にかその髄さえも鹿角であると言う事として受け入れられる様になってしまっていたのです。

改めて考えてみれば
蝦夷鹿の角の深く濃く染まる髄の色味や、皮目のテクスチャのおどろおどろしさが醸し出す独特な侘感は
「妖怪の意匠と相性が良すぎ」
最早至水の根付は蝦夷鹿の角じゃなきゃってくらいお気に入りな必須の材になってしまっているのでした。

ただこれは、根付彫刻としては「材選びが悪い」と、褒められた事ではないのかなとは思っていて・・・

それでも鹿一頭の命と引き換えに頂いた二本の角を良い材悪い材と選り分けたくは無いというのも本心で。

天然素材だけに切ってみないとわからない鹿角ですが「これで」と決めた鹿角は最後まで使わせて頂き、
決して蝦夷鹿の角である事を理由に「よろしくない」と評される根付に仕上げる訳にはいかんと肝に命じつつ・・・

今日も蝦夷鹿角彫ってる至水です。


03_蝦夷鹿スカル

作業机の上方に鎮座まします蝦夷鹿スカル。
このクラウン直下数cmのみの、最も白く詰まった蝦夷鹿角の大トロ部位を使う日が・・・いつか来るのかなぁ・・・
  1. 2017/07/14(金) 13:50:28|
  2. 至水(北海道)

至水「ブログのこと(其の二)」

 
ブログのこと(其の二)


ひと月ぶりの至水です。
今回のブログ記事には「何それ?」というノスタルジックでマニアックな単語が無数に出てきますので
随時ググりながら読み進めて頂きますと幸いで御座います(汗)

前回も書かせて頂きましたが至水はGallery花影抄ブログ以外に「悪魔ノ天秤」という自ブログを運用しております。
http://deadpool-shisui.blogspot.jp/


「悪魔ノ天秤」では至水の初製作根付から新作まで、製作物の全てを時系列順に公開アーカイブしており、
各作品には作品画像と共に意匠モチーフのバックストーリーや妄想設定等も書き添えてありますが、
これは35年前のある模型誌の特集が原体験となっていて、至水は書かずにいられないのです。
1982年5月に発刊された模型誌「月刊ホビージャパン」第153号(表紙にはガンガ・ルブ!イデオンですよ!!!)
その号の特集テーマが、「素晴らしき駄物キット」と題し
模型マニアに軽く見られがちなキャラモノプラモ(Dr.スランプのリブギコのキットとかね)や、
スケールモデル以外のトイキット(ロボダッチのタマゴローとかね)、
玩具(ミクロマンとかね)等を改造し自分だけのオリジナルモデルに仕上げるというものでした。
その作例の中に横山宏氏がミクロマンの強化スーツをベースに製作された「AFS(Armored Fighting Suit)」があり、
ミクロマン大好きっ子だった至水は、いや中学行くかそこらでミクロマンはもう卒業しなさいと
親に窘められていた至水少年だったのですが、
当時のミクロマンは既にシリーズの勢いが衰えてしまった最後期、丁度ダイアクロン移行期でしたが、
模型用の塗料で彩色し「リアルタイプ」なんて、自分だけのミクロマンにしよう!とか、
メーカーのタカラ側から新しい遊び方を提唱していた時期でして、
バリバリのハードSF仕様に仕立てられた横山氏のミクロマン=「AFS」の登場に狂喜乱舞したのでした。
そして横山氏の「AFS」は単発企画に留まらず
「29世紀の地球を舞台に地球独立政府傭兵軍とシュトラール共和国軍との戦いを描く」という物語と設定と共に
『S.F.3.D オリジナル』と題したオリジナルフォトストーリーとして連載が開始されました。
「月刊ホビージャパン」では『S.F.3.D オリジナル』連載終了後も、
「製作記事」+「読み物として書かれたオリジナルストーリー」+「造形物の情景模型作品画像」という掲載フォーマットは、
担当造形家を変えて世界観を変えてシリーズ化し、小林誠氏の『未来兵器AS』、韮沢靖氏の『CREATURE CORE』、
更に竹谷隆之氏の『漁師の角度』を世に送り出した「S.M.H」へと受け継がれて行きます。
(「S.M.H」はホビージャパンのMOOK本として創刊されています)
至水が根付を明確に意識したモノ、入口は古根付コレクターだったからとかではなく、
食玩の妖怪根付だったりするそもそもが「模型サブカル少年至水」な訳で、
頭ん中の妄想に蠢く異形の輩を「根付」という形で具現化し、
オリジナルの設定やストーリーと共に作品を公開しているブログ「悪魔ノ天秤」は、
今はもう存在しない憧れの「S.M.H」で連載させて頂いている感覚で、
「オリジナルで勝負しなよ」と至水に天啓を与えてくれた「S.M.H」は至水の中ではずっと続刊中なのです・・・

そんな訳で、至水は「根付」+「ブログのテキスト」を合わせた一つの作品として、
毎度「悪魔ノ天秤」を書かずにはいられないのです。

blog170606.jpg 
今も変わらず至水の根底に流れてる
大切なのは「オリジナル」って事
根付だって一緒だよ

  1. 2017/06/06(火) 15:07:30|
  2. 至水(北海道)

お久しぶりの至水です。

ブログのこと(其の一)

暫くぶりのブログ更新お久しぶりの至水です。
今まで不定期だったGallery花影抄ブログ(至水カテゴリ)の更新でしたが、Galleryからの要請もあり今回より毎月書かせて頂く事となりました。

改めて宜しくお願い申し上げます。

至水はGallery花影抄ブログに投稿する以前、2011年1月から「悪魔ノ天秤」というブログを公開運用しており、そちらには2010年後半に前職を離職し初めて製作したタグアナッツ製の根付から新作の「尻目」まで、更に根付以外の製作物も含め全て時系列順に公開しています。

blog17050301.jpg

http://deadpool-shisui.blogspot.jp/

各作品には意匠モチーフのバックストーリーや妄想設定等も書き添えてあり、「至水全百科」的な「全百科」と書いて「オール百科」と読ませるコロタン文庫式アーカイブブログとなっております。

ウェブで自身の作品を公開されている根付師の方も少なく「根付師は作品で語れ」なんて何処かで聞いたような気もしますが何せ至水は言いたがりで・・・
ある意味至水作品の説明書である其れらのテキストを含め一つの作品だと思っていますので、「しょうがねぇなぁ至水は」と苦笑いで御一読頂ければ幸いでございます。

Gallery花影抄ブログリブート投稿の第一弾が「他人のブログで自分のブログをレコメンドする」という掟破りな投稿になってしまいましたがこれもまぁ・・
至水っぽい死水っぽい・・・

次回「ブログのこと(其の二)」に続く
  1. 2017/05/03(水) 16:31:04|
  2. 至水(北海道)
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