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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り2019年5月/「老根付師 徒然草 皐月」 齋藤美洲(埼玉)

久しぶりにブログを書き始めて、気が付いた。今日(4/28)は、私が生まれた日。
無頼的な生活をしながらよくぞ・・・と思う。来年は「喜寿」なんて信じ難い。

掌の上で、古い友人より貰い受けた無患子(むくろじ)の実に見入る。
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不思議な実で、種は羽子突きの羽の先に使うとか。外皮は堅く、艶のある美しい半透明で、
時を経ると色が濃くなる。果実は無く、黒い種子が独立してあり、振るとカラカラと鳴る。
本日なればこそ故にか、無患子の不思議な面白さは、いつの間にか感動した作品に
出会った時の様に完全に感情が移入された、私のオブジェとなった。色合いと形を愛で、
耳元でそのおとないを聞く時に、遠い昔が偲ばれる。過去は還らない。無数の思い出たちが、
何故にか、種子に入り込み、凝縮されて、私の心の核になった様な想いがして、
暫し己が来し方に浸らせてくれた無患子の実。
老根付師 誕生日のセンチメンタル。
啊啊 。

ここ数ヶ月、古典根付のオマージュと、私が如何に理解しているかを命題にして、
自身を修業時代に還して仕事場にいる。

オマージュであって、コピーにならない仕事は、少々難しく感じられる。
根付美を探る為の勉強と言い聞かせ、居直れば、次第に楽しくなってくる。
評価を目的としていないため、出来不出来は別にして限度無く時は流れるが、
これもわが非才と苦笑する。ここに来て、三つの確信を得た。

 造形
「居合の勝負は鞘の内にあり」との言があるが、材料をカッティングする前に
作家の脳内にある完成図如何によって作品価値が決まる、と同義ということだ。
勿論、参考作品も見、デッサンもして、脳内に完成図があってこそ、
創り始めるのであろうが、その良否を評価するのは自身であるゆえ難しい。
造形の最中、「ああすれば」「こうすれば」と迷うのは、完成図が未完ゆえにだろう。
荒彫りの初めの段階で、全体的なムーブメントが出せない事も、自戒する。

 ヤスリ作業
工具を使用して、荒彫りの後、小刀で仕上彫りに移る作家が多く見受けられるが、
これでは根付の持つべき機能美は出せない。多少荒彫りの形が失われても、
全体のフォルムと、頭から背骨、尾先までのラインを確認するのが目的だから。
(動物の場合。人物なら頭から足先まで。)
多少、工具で出した形が失せても、残った固まりの内に正解がある。

 小刀作業
昭和末期まで、根付業界では、荒彫りと仕上彫りは分業が多かった。分けた理由は、
造形と仕上技術は別の才能が必要である故に、得意分野の職人の合作にして作品価値を上げた。
現代根付は一作が求められる故に、造形と技術の研鑽が必要になる。
面白い造形なのに技術不足のため、ランクが下げられる例が多いのは勿体ない。

 小刀作業は、三つの段階に分かれる。
①丸い先の大き目の小刀で、工具、ヤスリのキズを取りながら、全体のフォルムと各部を確認し、
顔、手、足を決めた彫りは入れないで、あくまでも全体のバランスを考える。
②プロポーションを納得してから細部を決める彫りを入れる。私の場合、頭と顔は最後に彫る。
全体が決まって、頭部の傾きを決定する。
③ここでペーパーで磨きに入りたいところであるが、小刀で磨き彫りをする。古典の名品を見ると解る。
仕上げたい気持ちを抑え、僅かな小刀キズや面の歪みを訂正していくと、
より細部の彫り不足を発見し気になってくる。この作業に面白さを感じてくると、時間は度外視され、
より良き完成のみが作家の期待となる。目に止まる他作品を見ると、作家が如何に己の作品を愛し、
「良くなれョ」と小刀を走らせたかを感じるのは、この作業から出るのでは?
又、これは古典に見られる「根付らしさ」につながるのでは、と思われる。
面白さに夢中になっていながら「落とし穴」に気をつける。「やり過ぎ」である。余計な細部を彫り過ぎ、
全体を壊すことも心すべきことだ。

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百回話ではあるが、雅俊先生唯一の教えの言葉、「納得するまでやることデスョ」を
座右の銘にして、修業心を持って今日に至るが、「お前の才能はこのくらい?」と
言われている様で・・・。居直るしかないが・・・五月病は恐い。

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(現在取組中の作品)



  1. 2019/05/11(土) 15:02:44|
  2. 齋藤美洲(埼玉)

齋藤美洲 根付彫刻新作展 〜豊年踊り 生けるものへの讃歌〜 出品作品

【展覧会出品作品の御案内】

齋藤美洲 根付彫刻新作展 〜豊年踊り 生けるものへの讃歌〜
2019年2月16日[土]〜24日[日]
13:00~19:00(最終日〜18:00)

現代根付界を長く牽引してきた齋藤美洲の新作展。
素材に鹿角を用いた彫刻は、制約が多く造形の難易度が高いが、そこに創造と想像の楽しみがあります。
作家が長年得意としてきた題材でもある、豊作を願う「豊年踊り」をテーマとして、
手のひらサイズの小さな作品の中に大きな造形が込められた新作の根付彫刻十点が並びました。

作家の言葉 「鹿角、この窮屈な素材に如何に動きとバランスを表現できるのかの挑戦。」(齋藤美洲) 

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豊年踊り「狐 ⑴ 」 鹿角 6.3×5.5×1.4cm
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豊年踊り「狸」 鹿角 4.2×4.2×2.5cm
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豊年踊り「子 ⑴ 」鹿角 5.1×4.0×2.4cm
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豊年踊り「子 ⑵」鹿角4.0×4.0×1.8cm
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豊年踊り「鼯」鹿角5.0×4.6×2.3cm
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豊年踊り「猫 ⑴」鹿角7.1×4.4×1.8cm
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豊年踊り「猫 ⑵」鹿角 6.7×5.1×1.9cm
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豊年踊り「兎 ⑴」鹿角 7.3×4.5×3.0cm
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豊年踊り「兎 ⑵」鹿角 5.9×4.3×1.5cm
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豊年踊り「狐 ⑵」鹿角 11.5×5.0×1.5cm
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作品へのお問い合わせは、Gallery花影抄/根津の根付屋
netsukeya@hanakagesho.com
03-3827-1323 まで
宜しくお願い申し上げます。
  1. 2019/02/23(土) 19:41:38|
  2. 齋藤美洲(埼玉)

作家便り2018年12月/「老根付師 徒然草 師走」 齋藤美洲(埼玉)

 月日は百代の過客にして、行きかう人も又、旅人なり・・・なぞ想いながら、本年も根付師として人生の旅を歩み、平成三十一年も同じ姿でトボトボ・・・。
 昨日、ボーリングに一人で興じていたら、楽しむ事6ゲーム。受付嬢に驚かれた。まだ脚力はあるか?啊啊。

 回帰の想い 「根付彫刻のすすめ」付録 プロ編
 毎年、年賀状は十一月に創り、言葉ではない近況報告にしている。
 この一年、個展の為の豊年踊りシリーズを、制約のある鹿角で制作して過ごし、多少厭きを感じていた故、賀状用作品は、私の原点に還り、古典(本来)へのオマージュを主題とした。
 創り始めると、時間を超えて、若き日の自分が仕事場にいた。古典を畏敬しながら、オリジナリティを保つのに苦慮しつつ・・・。
 図柄は、良く見かけるものだが、これに私が表現できるかと、デッサンを重ね、完成図を脳裏に叩き込む。これが、良くなるか否かの分かれ目。
 次に材料をデッサンに合わせた塊(オブジェ)を造る。この時は、脳裏の完成図が六面体として全てのアングルを認識していなければ、実際の作品は違うものになる。
 出来た塊は単なる物体であるが、そこに完成形を感性移入させると動きが見えてくる。完成形に合わせ、鼻先から尾先までに線を引けば、S字が浮かぶ。それを背骨に頭、胴、尻を想像すれば、自ずと垂直方向にしか見えない塊に動きが出る。古典名品には左右対称がないのは、この原理だ。
 こうして、各部位を塊に線で書けば、後は彫り出せば荒彫りなり、仕上げ仕事につながる。
 私は今回、各部位の特長を強調することより全体のフォルムの方に心掛けた。根付としての塊に力を入れた。腹の太い丸みを見せるために後右肢を伸ばして、左前肢の下まで持ってきた。これは同時に腰を横にすることにより、フォルム全体に動きを持たせるためでもある。
 古典根付に思いを馳せ、実に楽しい時間であったが、仕上がってみると、雅俊先生の言葉が心に刺さる。“納得いくまでやる事ですョ” 何回も書くが、仕上がりとした作が、その作家の実力である。古典の評論、評価が出来ても、古典の域に達するのは至難と思い知らされた。ただ、この仕事は、楽しくやりがいのある大きなテーマである事にも気が付いた。生まれ育った古里の町を散策する様に・・・。

 古典資料を漁って・・・
 とにかく面白く、時の経るのを忘れる。
 各作家の発想が個性的であり、突き詰めた作品を観ると、その人の性格、人生観さえ想像できる。
 江戸根付は、装剣奇賞に見られる初期から幕末まで、技術的進歩は目覚ましいが、一芸を成した根付は、テクニックを超えた、何かに心を魅了される。
 時代、時代によって作風は変わるが、私がめでる作品には全て“品格”を感じる。それが何処より来るのかは、現時点では説明できないが、厳然として有るのは確か。

 幼少より根付に惚れ込み、彫り続けてきた爺が、己の至らなさを曝す如きに書いてきたが、パラドックスに、次の如く自覚。
 己の下手を誇れ!! 何故ならば、上手になる道は眼前に有るからだ。
 上手になったら、上手を維持するために受身になってしまい、その先つまらないかもネ・・・。

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  1. 2018/12/30(日) 22:34:10|
  2. 齋藤美洲(埼玉)

齋藤美洲著「根付彫刻のすすめ」(新装増補普及版)出来ました!

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齋藤美洲さんの「根付彫刻のすすめ」(新装増補普及版)日貿出版社から見本が届きました!
伊勢の中川先生の「木で彫る根付入門」も新装版です!

最初の方の美洲作品写真集の部分が新たに増補されています。
技法について内容は、ほぼ同じです。(正確には一行だけ変わりました。)
あと、道具や素材についての情報が更新されています。

すでにお持ちの皆様は、御注意くださいませ。

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[日貿出版社]
webサイト
Facebook ページ
  1. 2018/12/14(金) 19:42:18|
  2. 齋藤美洲(埼玉)

作家便り「2018年12月/齋藤美洲(埼玉)」

老根付師 徒然草  師走
初冬の幻影

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午前の仕事場、南にあたる壁を見ると、写真の様に、書の額と墨絵が
並んでいる様であった。書は本物。他は何かと考えてしまったが、
北側の開けた窓から何かを反射して、植木の影を映し出していると気が付いた。
反射物を探したが見つからない。隣家の壁ではない。15分ほどで消滅したが、
次の日は現れない。不思議な事だと思っていると数日して現れた。
光源は隣家の車で、駐車位置での偶然だった。良い作品に見惚れる時、
作家意図を発見出来た想いがした。

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時の流れ
「五十年後」。コナン・ドイルの短編小説。恋人と結婚の為、出稼ぎに出るも、
事故の為、記憶喪失。外地で成功するが、50年後突然に記憶が戻り、故郷に
急行すると、時を経た昔のままの家に、老嬢が椅子にもたれ、彼を待っていた。
高校時代、これを読んで、人生と時の流れにロマンを感じたものであった。

35年前の私の薄れていた記憶を鮮明にさせられる事が起きた。
「根付彫刻のすすめ」の復刻増補版の12月出版であった。急な話ゆえに慌ただしい日々の中、
初版を熟読したが、根付彫刻の基本理念、理論に一毫の変化もないことに我ながら驚く。
この時期の私でさえ確信的な論を持ち得たのだから、今の若い作家に対しての考えを
改めなければとつくづく思い、「後生畏るべし」の語を胸に刻む。

初版に加えて、50点ほどの、ここ十年間の近作を掲載出来たのは、時の流れの中、
根付についての理論は不変であるが、美意識、感性、感動等、歳を重ねての
表現変化を見せられたのは、私にとっても好機であった。

ひたすらに、根付彫刻に興味を持った人々に、作る楽しさと創造する喜びを持つ
ための一助となる事を願った毎日だった。
この間、60年前に同じ教室で学んだ人と会う約束があったが、流れてしまった。
老根付師の話と歳月は長いこと!オソマツm(_ _)m


鹿角という素材 2
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この難解な素材の中に、如何に自由な表現が出来るかの試みの二作品。
前作は、脳内の発想転回に固さがあったが、今作の制作については、
少し自由を楽しむ事が出来た。「制約の中の自由」を掲げての根付創作の
毎日であるが、迷い出すと技術ばかりに救いを求めることの愚かさを、自ら戒めている。
 
老子に曰く
  大道は平らかなり、されど歩みがたし
  小道は険し、されど歩みやすし

  1. 2018/12/04(火) 12:26:47|
  2. 齋藤美洲(埼玉)
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