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根津の根付屋 & Gallery 花影抄 blog

東京・根津にある主に現代根付、立体作品をご紹介しています、Gallery花影抄のblogです。
展覧会や取扱作家情報などを発信しています。

作家便り 「2021年4月/紫苑 (伊勢)」 伊勢根付というジレンマ

最初に文章が支離滅裂になるかもしれませんがご了承ください。
そして、伊勢根付を否定するものではないことをご理解ください。


伊勢根付というジレンマ という話



僕が考えるにおよそ伝統工芸の始まりの条件は、

⒈ その地域で材料が多く取れたか手に入れ易かった。

⒉ その地域の生活環境や状況によって定着した。

のだと思っています。



伊勢根付で言えば、1の条件は、伊勢市の南側に位置する朝熊山には朝熊黄楊がたくさん自生していた事。

聞くところよると今では勿体ない話ですが、炭や薪にしていたほどらしいです。

それほど日常的に手に入ったものでした。

(今ではなかなか手に入らないのですが…僕は2016年に一本手に入れた以降手に入ってません。)

2の条件は、江戸期のお伊勢参りの流行が考えられます。

そして、伊勢の神宮の神領域に入るには、動物、獣の革で出来たタバコ入れを持ち込むことが出来ませんでした。

お伊勢参りの人は、伊勢に入る前、今の明和町当たりで乗ってきた馬を降り、
革で出来たタバコ入れを紙で革に似せて作られた擬革紙で作られたタバコ入れに代え伊勢へと向かいました。

(一旦は廃れた擬革紙ですが、今は〈擬革紙の会〉が出来、後世に残そうと活動しています。)

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(僕が持っている擬革紙の名刺入れ)

で、その条件を考えるに革で出来たタバコ入れが持ち込めないなら、
象牙や鹿角、野猪牙で出来た根付も持ち込むことが出来なかったのではないかと想像することが出来ます。

ならば、黄楊の木で出来た根付がこの地域に根付くのも頷けるかと思います。

ちなみに伊勢のとなり、志摩では鹿角を使って根付を作っていた根付師がいたそうです。

一般的に伊勢根付は、お伊勢参りのお土産として根付いたと言われますが、
先程の擬革紙は、制作していた資料とかも残っている(明和町の三忠さんとかの)のに対して
伊勢根付が伊勢で売られていたとか作られていたという資料が残っていません。

初代の鈴木正直以前にも根付が作られていたのか何もわからないのです。

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(唯一、僕が持っている正直銘の「しめじ」の提げ飾り。
鑑定士ではないので本流なのか傍流の正直なのか分かりません。
[正直を名乗る人が多数いたので…]
それなりの時代は経てると思うので仕上げの参考に購入したもの。)



先日、後輩の大真君と昭司君が家に来て来年の春に開くグループ展について話をしていた時
「伊勢根付の伊勢はどこまでの地域を指すのか?」と「伊勢根付の定義とは何なのか?」が話題に出ました。

伊勢根付の伊勢はどこまでの地域を指すのか?



広範囲の伊勢は、江戸期の伊勢の国を指すのでしょう。

伊勢茶(四日市当たり)や伊勢型紙(鈴鹿市当たり)のように三重県の北勢部でも伊勢という名称がついたものがあります。

狭い範囲での伊勢は、今の伊勢市周辺を言い、僕らが伊勢と言えばこの狭い範囲の伊勢を指します。

個人的には、岷江や虎溪などの根付師は同じ三重県ですが(岷江は津藩お抱えだった根付師)、
伊勢根付というイメージが無いので鈴木正直以降伊勢市周辺で彫られた根付がやはり伊勢根付だと思っています。



伊勢根付の定義とは何なのか?



これが伊勢根付というジレンマに関わってくるのですが、

三重県教育委員会「民俗行事調査報告書」の伊勢根付の中にこのような一文があります。

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僕達より1世代前の伊勢の根付師からの聞き取り調査だと思いますが、
伊勢根付は朝熊山で採れた朝熊黄楊でのみ作られた根付の事だという認識だったんですね。

でも、僕達の世代になると思うように朝熊黄楊が手に入りませんから、
三重県内で採れた黄楊ならまだしも薩摩黄楊や御蔵島の黄楊、
さらに中国の黄楊を使って根付を制作せざる得なくなって来ました。

ここに伊勢根付というジレンマを感じます。
手に入らない朝熊黄楊、でも朝熊黄楊以外で作った根付は伊勢根付と言わない…

朝熊黄楊以外の材料を使い、リューターなどの機械も使って根付を制作するのは
今の時代には仕方のない事と思うのですが、となると僕らが作る根付は伊勢根付ではないのでしょうか…?

手に入れられない材料にこだわっていても仕方がないし、
もっと色々な素材を黄楊以外や鹿角などを使って根付を制作してもいいのではないか?とも思うのですが。

これからの伊勢根付がどのような定義で作られるのかを考えるべき時期かもしれません。



因みに僕は、他の人がどう思ってるかは知らないですが、僕自身から伊勢根付を名乗っていません。
伊勢根付についての知識もなく、〈技術的に出来るかどうかは別として〉
伊勢根付の制作・仕上げ方がどんな風だったか知らないのに伊勢根付とは名乗れないと思うからです。
伊勢という地に生まれ、住み続け根付を彫りながら生活してるのに矛盾している事を言ってるかもしれませんが…

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(家に植えてある朝熊黄楊の苗木、植えて何年も経つのにまだまだ大きくはなりませんね。)

以上

伊勢根付というジレンマという話
  1. 2021/04/13(火) 21:47:27|
  2. 紫苑(伊勢)

作家便り「21年3月 /紫苑(伊勢)」

ご無沙汰しています。

昨年の9月23日に脳出血で入院してから半年が経ちました。

入院当初は、脳出血のほか脳梗塞の跡が3・4ヶ所、
眼底出血、高血圧に糖尿病、動脈硬化、高脂血症、心臓肥大と
「このままでは、いつ死んでもおかしくない。」と医師に言われました。

足はずっと痺れているままですが、おかげさまで薬を飲みながらではあるけど、
高血圧だった数値も正常値の範囲に下がり、血糖値もだいぶ下がって来てます。

以前には、還暦までに作品集作りたいなとか(まぁ誰も欲しがりはしないでしょうが…)
ボツにした作品集めて「ボツ展」やってみたいなとか考えてましたが、
そんな欲もどこかに無くなってしまいました。

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(ボツにした作品がだいぶ増えました。)


生活も今までと同じという訳にはいかず、田んぼを作る事を辞めました。

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(去年より耕す事もなく放置したままの田んぼ)

運動の為に散歩をし、夜遅くまで起きている事も止め、早めに風呂に入って寝るようになり、
根付製作に当てる時間は少なくなりましたが、まぁのんびりとやっていこうと思います。

最近、根付の後輩たちと話してて思った“伊勢根付というジレンマ”という話はまた次回。
  1. 2021/03/24(水) 19:22:45|
  2. 紫苑(伊勢)

作家便り「20年1月 /紫苑(伊勢)」

明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願い申し上げます!

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旧年中は、あまりブログを書けずにいて申し訳ありませんでしたが、
年明け早々に下載の根付を花影抄に送りたいと思います。
宜しくお願い申し上げます。


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「ハマる犬」
元は、猫がゴミ箱に突っ込んでいる映像を見て彫ろうと思いました。
犬なんかも箱に頭突っ込んでいるイメージがあるのですが、
ただの箱では作りにくいので樽に突っ込んでいる姿にしました。


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「野狐禅」
これは、根付を作り始めた頃に「意匠発想の種」と言うノートを作って
ネタになりそうなものを描き留めていたのですが、
それの6ページ目に野狐禅が書いてあるので十年以上経ってやっと形になったものです。


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「萱鼠(カヤネズミ)」
個人的に気に入ってます。年賀状にも使いました。(年賀状は、数パターン作るので)
カヤネズミ自体よりも巣を彫るのに時間を取られて普通に根付を彫るのと時間が変わらないという…
これは提げ飾りですが、つけている京組紐の色はカヤをイメージしてつけているので、
このままの状態でお迎え頂けたら嬉しいです。


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「針鼠」
これも提げ飾りです。
単純なものにしたかったんですが…針のテクスチャーを彫るのに時間がかかり、
これもまた同じく普通の根付を彫るのと同じ時間がかかってしまいましてウーンって感じです。
後は、「栗」の提げ飾り。底のテクスチャーをいつもの浮かし彫じゃなく手彫でしています。


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年末に根付を彫る時サイズの加減で2ミリくらいの厚みを切り落とすことがあります。
木口で切った材料の使いみちがなくて、もったいないと思ってたんですが、
木口版画の作品展を見てコレなら使えるかなと彫ってみました。
木口版画の技法を知らないので我流ですが、
もう少しキレイに彫れたら材料を捨てておかずに済むかなぁ…と。
  1. 2020/01/09(木) 11:07:52|
  2. 紫苑(伊勢)

作家便り「19年5月 /紫苑(伊勢)」

ご無沙汰しています。

紫苑です。

インスタに載せたのですが、こちらの作家ブログにも…。

僕の毛彫について。

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主にこの笹葉の鑢が折れたのを印刀したヤツ(左の物)で彫っていきます。
欠けることがないのでずっとコレを使っています。

補助的に三角針とその針の先を曲げたものも使います。(印刀が当たらない所に使います。)

彫る動物によっては、1ミリの三角刀を使うこともあります。

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この面(背面)を使って彫ります。
彫る前には、平になるように砥石で研いでいます。



刀を立てて、指のスナップで横にスライドさせながら筋を彫っていきます。

ストロークの筋の長さは、だいたい1ミリ前後ですが、彫る動物によって長さを変えています。
カワウソは、毛が短く感じるので1ミリくらいです。
体の場所によっても筋の長さは変わります、
顔は1ミリ以下のストロークですが尻尾などは1ミリより長かったりします。

blog19052603.jpg


筋の長さ半分くらいから次の段を彫っていきます。

理想は、始めの段の筋と筋の間に次の段の刀を入れることです。
が、筋を気にせず指のストロークのリズムで彫っていきます。
(なので結局長い筋を彫ったみたいに見えてしまうことがあります。)



これを体全体に施していきます。
  1. 2019/05/26(日) 20:27:21|
  2. 紫苑(伊勢)

作家便り「19年3月 /紫苑(伊勢)」

3月3日(日)より3月7日(木)まで、伊勢市の生涯学習センターいせトピアにて、
伊勢志摩木彫会の作品展を開催しています。
伊勢一刀彫・レリーフの浮かし彫・根付を作る人など木彫全般のプロ・アマ混合の会です。

根付に関しては、僕の他、中川忠峰・阪井正美・森本節治・升元一・石井夢峰・神立る峯
横山大真・中川東平(敬称略)とプロ活動している方々が参加しています。

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初日の今日3月3日は、あいにくのお天気となってしまいましたが、
もし、近くに来られることがあれば、立ち寄っていただけたら嬉しいです。
(会員の方がいれば、根付は、手に取って見ることも出来ます。)

開催時間は、朝9時から夕方5時まで。最終日は、夕方4時まで。
(なお、月曜日は休館です。)
  1. 2019/03/03(日) 14:14:11|
  2. 紫苑(伊勢)
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