「美術館てくてく日記」第7回は、先月まで大阪芸術大学のほたるまちキャンパスで行われていた「高円宮家 根付コレクション展」です。
入り口から古根付の素晴らしい作品にまずため息をつきました。そして奥へすすむにつれ、現代のものになっていくわけですが、一番奥の作品を見終わったときこれは高円宮家コレクションではない、高円宮家美術館であると私は感じました。というのもコレクションとは元来個人的嗜好が反映されているものであるはず。しかし、このコレクションは素材の多様さ、モチーフの多様さ、そして根付を制作している根付師の多様さ(決して日本だけでつくられているわけではないのです)、根付のありったけの可能性を集めようとしている。これはもうコレクションの範疇を超えていると思ったのです。
また、この展覧会では、今までの展覧会スタイルと違い、2つの点でとても興味深い試みをしていて、そのことにも触れないわけにはいけません。
ひとつは学生の等身大写真パネルに、たぶん学生が作ったと思われる根付に提物をぶらさげた展示。美術工芸品としての根付の魅力ももちろんだけれども、実際に街にくりだすとき、携帯とSUICA(関西だとICOCAですね)を提物に入れて手ぶらででてみませんか?という提案ですね。用としての根付とでもいいますか、根付本来の意味にもう一度戻ってみてはというメッセージを感じます。
もうひとつはiPodtouchの使用。壁には、アップルのiPodtouchがぶら下がっていて、作品映像を縦と横を自由に切り替えながら見たり、画像を拡大しながら見ることができるようになっていました。精緻な彫刻は根付の魅力のひとつですから、これはとてもいい試みです。有機ELテレビとiPodtouchをつないでもう少し大きくてきれいな画面で見られたら、根付の見方が変わるかもしれないと、想像が膨らみました。松屋銀座で開かれていた
デザイン物産展ニッポンでも効果的にiPodtouchが使われていましたし、展示方法の仕組みとして今後欠かせないものになるかもしれません。
根付の可能性を考える上で、そして展示方法の可能性を考える上で非常に参考になった展覧会でした。(花影抄・藤)


NETSUKE Takamadonomiya Collection
Osaka University of Arts satellite campus (Dojima River Forum 3F )
テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2008/11/11(火) 15:18:04|
- 美術館てくてく日記
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「美術館てくてく日記」第6回。
ソニービルとメゾン・エルメスの間の細い裏通りに歩みを進め(芦原義信とレンゾ・ピアノの建築の間を通るなんて何と贅沢な!),メゾン・エルメス1Fにあるヴァンキャトルセゾンに視線を向けると,壁になんか不思議な物体が.メゾン・エルメスに入るのは未だに慣れず非常に緊張するので,近づいてドア越しにのぞき込んでよく見ると何とそれはワニ! 体長は1メートル50センチというところでしょうか.エルメスってこんな不思議なディスプレイするのかと思って帰ろうとしたら,店員さんにドアを引かれ,入らざるを得ない状態になりました.ま,まずいな,買うものなんてないしなあどうしよう?とまごついていたら,店員さんが,こちらは東京大学の博物館のものなのです.こちらで展示しているのですよ,とのこと.へえ,面白いなあ,東京大学とエルメスのコラボレーションかと思い,勇気をだしてエルメスの敷居をまたいだらそれは今まで見たことのないラビリンスワールド.ワニの他にも剥製や何の動物の頭蓋骨かわからないものが展示されていました.すごく面白い!エルメスと標本のコラボレーション!標本が展示会場を代えるだけでまた違った魅力がでてくるとは全然夢にも思わなかったです.
11月24日までこの不思議な展示,「
驚異の小部屋」展がメゾン・エルメスで開かれています.エルメスと東京大学というと異色のコラボレーションのように感じますが,美と富の象徴であるファッションブランドと,知と歴史の象徴である大学博物館ですから,ともに権力の象徴としての側面をもつわけで,そういった意味では意外に相性がいいのかもしれません.また,学術標本のもつ自然の形態と,エルメスがつくりあげた人工の形態がどのように相補うかという観点からみても非常に面白い試みであると思います.是非,びびらずに足を運ばれてはいかがでしょうか(花影抄・藤)
テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2008/10/29(水) 18:49:33|
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「美術館てくてく日記」第5回は、先月まで東京都庭園美術館で開催され、非常に好評を博した「船越桂 夏の邸宅」です。船越の彫刻だけではなく、ドローイングと版画にも焦点があてられ、彫刻以外の分野においても船越作品の素晴らしさを感じることができた展覧会でした。しかし、何といっても今回の目玉はドローイングでも版画でもなく、船越彫刻とアール・デコ装飾に彩られた庭園美術館の作品の出会いにあったと思います。今回の展覧会タイトルである、夏の邸宅、そしてパンフレットの表紙にもアール・デコ空間と彫刻と書かれてあることからも、空間と彫刻との調和に力を注いでこの展覧会を構成してきたのかがわかります。特に「夏のシャワー」や「森へ行く日」などは、あまりにも建築と調和がとれていて、この建物のためにつくった彫刻ではなかろうかと思ったほどです。そして、この感覚は、私に次のような疑問を浮かばせたのでした。すなわち、空間と彫刻はどのような関係をもっているものなのか、また彫刻をみるという行為はその空間との関係まで含むのか否かと。
彫刻は剣道やフェンシングのように、彫刻と観る者が1対1で向き合うことが重要であると考えていました。しかし、「空間と彫刻の関係もふまえて彫刻をとらえる」ことを観る者にうながすという仕掛けがなされると、これは観る者に混乱を招くように思います。実際、いくつかの部屋には鏡があり、そのような場所においては、彫刻と私、鏡に写っている彫刻と私、それらをとりまく空間と彫刻と私と、様々な角度から順を追って船越の世界観に迫っていくことを要求されます。これはなかなか一筋縄ではいかない鑑賞行為です。
主役の座にはなれなかったドローイングと版画も非常に見応えがあり、船越作品の素晴らしさを充分堪能した展覧会ではありました。しかし、それ以上に彫刻を見る上で、空間との関係をどのように考えないといけないのか、私自身に課題を投げかけた重要な展覧会となりました。(花影抄・藤)

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2008/10/19(日) 12:18:50|
- 美術館てくてく日記
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「美術館てくてく日記」第4回は、松井冬子、天明屋尚、山口晃らとともに現代日本画の一翼を担う「町田久美-日本画の線描」。彼女の故郷、高崎にある高崎タワー美術館で開催された国内美術館での初個展です(8/24日で終了)。
この個展は通常の個展とは構成が異なっていました。まずはじめに上村松園、伊東深水、小林古径といった館蔵の近代日本画を見てから、その後に町田久美の作品を見るという二部構成になっているのです。名だたる日本画の巨匠の後に作品を見させるのですから、これは相当に勇気のいることだと思います。
全37点の作品を通して町田が次第に自分の表現方法に自信を持ってきている様子が手にとるようにわかります。モチーフが簡素になり、線がより大胆にシンプルになってきています。「もくもくとした量感」が「さらり」と伝わる感じがダイレクトに見ている側に伝わるようになってきているのです。館蔵近代日本画を町田の作品の前に見ていたことで、この感覚がいっそう引き立ちました。なかなか面白い。日本画でも量感をこんなふうにあっさりとシンプルに提示することができるのは私にとって新たな発見でもありました。
ここ数年で彼女の作品は一層自信がみなぎり、構図にも力強さがあってどんどん変化しているように思えます。他の現代日本画のメンバーも含めて、これから目が離せない作家のひとりだと思います。(花影抄・藤)

テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2008/09/16(火) 16:16:09|
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「美術館てくてく日記」第3回は、東京国立博物館で開催されている、「対決−巨匠たちの日本美術」です。今最も話題になっている展覧会で、先日入場者数が20万人を超えました。
国宝10数点、重要文化財約40点を含む名品を一堂に会して見られることは滅多にありません。12組の様々な分野の名匠の対決による美の饗宴。その中で私が注目したのは絵画の歴史です。
狩野永徳や探幽らの狩野派、俵屋宗達と尾形光琳らの琳派、南画派の池大雅や与謝蕪村、丸山応挙を祖とする円山派。この三派を中心として長沢蘆雪、伊藤若冲や曽我蕭白らの奇想派の画家がでてきます。安土桃山時代から江戸時代にかけてそれらの三派(グループ)から個人へという大きな流れがあるのではと思いました。
また、丸山応挙(例えば猛虎図屏風)あたりぐらいから、知識や教養を持たずとも、絵だけでも楽しむことができる。時代が遡るにつれてそういう傾向が顕著になってきていると思います。
名匠の作風がはっきりとつかめるだけでなく、日本の美の歴史がどう変容してきたかを見ることのできる素晴らしい展覧会でした。(花影抄 藤)

特別展「対決−巨匠たちの日本美術」は8月17日まで、東京国立博物館平成館で。
http://www.asahi.com/kokka
テーマ:絵画 - ジャンル:学問・文化・芸術
- 2008/08/15(金) 10:01:49|
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